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【コラム】前田悠佑という奇跡


「この状況で残り3試合でも(J1残留の)可能性が残っているのは大きいですよ。ここからまた、気持ちを切り替えてトレーニングをできれば良いと思います」
J1残留を争う鳥栖との一戦に敗れた翌日、前田悠佑はそう言った。

現在、V・ファーレン長崎に所属する選手の中で現役最長所属選手であり、歴代でも、昨年に引退し、今はV・ファーレン長崎アカデミーでスクールコーチを務める神崎大輔の8年に次ぐ7年の所属年数を誇るのが前田だ。大学卒業後、地域リーグのホンダロックSCで働きながらプレーし、2012年に長崎へ加入。2013年にJリーグデビューを飾った前田の経歴は現在のJ1では異色と言って良いだろう。

鳥栖との決戦となったJ1第31節には、ベストアメニティスタジアムの今季最多となる22,669人の観衆が詰めかけた。そのベアスタで、試合前のアップ練習のとき一番最後までボールを蹴っていたのは、前田とV・ファーレンの創設時には選手として、現役引退後はスタッフとしてチームを支え続ける原田武男コーチ。・・公式戦の観客が数十人だった地域リーグを知る2人だった。

そのときの気持ちを前田はこう語る。
「こういう所(リーグ・レベル)まで長崎が来たんだなって思いましたね。ピッチ練習のときからいろいろと感じました。ウチのサポーターがあれだけ来ていたのにも本当にグッときましたよ。」

結局、この日の前田には出場チャンスはなく、前田がピッチでボールを蹴れたのは、試合前のアップだけに終わった。チームも善戦をしながらも0-1で敗れ、リーグ最下位を脱することができなかった。だが、「最後まで逆転を信じてましたし、逆転できると思っていました。勝ちたかったし、貢献したかったですね。」試合の翌日、前田は残念そうに呟いた。

リーグ戦は残り3試合。その3試合に長崎はJ1残留を懸けることになる。
「残りは笑っても泣いても3ゲーム。やることは変えずにあとは全勝する・・そういう気持ちで臨むだけですよ。鳥栖戦の前から、あと3勝は必要だって言ってたわけですからね。何も変わらないですよ。」

前田の言葉とおり、泣くのも笑うのも残り3試合を終えたときでいい。ただ、最後の瞬間まで全力を尽くしていけばいい。そうすれば、シーズンが終わったときに「力なく」ではなく「歓喜」で泣き、「悔しさ」ではなく「嬉しさ」で笑えるのだろう。少なくとも、プロのセレクションを落ち続けて社会人サッカーをやっていた男が、J1でチームリーダーになるよりはずっと分の良い話だろう。前田悠佑という奇跡を見てきた身として、そう思わずにはいられない。

reported by 藤原裕久

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