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【コラム】世界の書評からリターンズ ~救世主監督 片野坂知宏 ~

今回は久しぶりにサッカー本の書評を。と言っても書評というより単純な感想文みたいなものですが、コラムのタイトルは大昔に個人ブログで書評をやっていたときのもので、某旅番組にインスパイアされただけで、パクリではありません。差し支えがあれば驚くほどスピィーディーに謝罪して、タイトルを変える用意はあります。ただ頭の中で勝手に石丸謙二郎さんの音声で文章を再生するのは自由だと思います。

今回紹介する本はこちら。

『救世主監督 片野坂知宏』
(著者:ひぐらしひなつ  発行:内外出版社)

2018シーズンにJ1昇格を達成した大分トリニータと、片野坂知宏監督の戦いをつぶさに追った一冊。かつて「地方クラブの雄」とまで呼ばれながら、J1経験クラブとして初めてJ3に降格してしまったクラブのJ1復帰の姿が、長く大分の番記者を務める『ひぐらしひなつ』さんならではの視点でつづられている。物語は紆余曲折、山あり谷ありで中々にハードなのだけど、リズムの良い文体のおかげでスッと読んでいける。このあたりは短歌をバックボーンとされる「ひぐらしさん」だからだろうなと。

2018シーズンのリーグ戦の戦いについて開幕から順を追って語られる物語は、監督と選手双方にスポットを当てつつ、合間にはキャプテンだった竹内彬の移籍や、浅田飴とクラブの交流といった話題も取り上げながら、J1昇格というクライマックスへと進んでいく。いろんな話題を取り上げながらも物語の芯がブレないのは、物語の核である片野坂監督のスタイルがブレないからだろう。

何しろ、戦い方の手法を変化させることはあっても、ベースの考えが徹底的に変わらないのだ。開始27分の時点で5失点していたヴァンフォーレ甲府戦でも「システムを変えて得点したとしても、それは自分たちの形ではない」と、システム変更プランを思いとどまるくらいである。たぶん「どうしたら良いかわからないから、とりあえず勝つためにロングボールを放り込みましょう」などと言おうものなら、浅田飴一缶分でも声が戻らないほどコンコンと説諭されるだろう。

「信念」「こだわり」「アイデンティティ」・・。そういった概念を説明する言葉はいろいろあるだろうが、筆者はそれを「変態」というすがすがしい一言で表現する。そういう意味でこの本には「変態」しか登場しない。監督もスタッフも選手も対戦相手もサポーターも、みんなボール一個を蹴り合うスポーツに一喜一憂し、人生の至福とどん底を行ったり来たりする「変態」たちだ。そんな「変態」たちを嬉々として追い続ける筆者もまた、「変態」という名の淑女なのだろう。

そこに共感できる方、まだその深淵を知らない方たちに、一度は読んでいただきたい。

reported by 藤原裕久

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