ニイガタフットボールプレス

「メソッド部門」という方法論①~私たちのモチベーション~

その方法論は、これからアルビレックス新潟をどう変えるのだろう。4月から本格的に始動した「メソッド部門」について、オスカル・ガルシア・コーチに話をうかがった。オスカルコーチの誠実な受け答え、佐枝篤コーチの的確な通訳によって、インタビューはとてもテンポよく進んだ。

■大切なのは対話をすることです。

――4月から本格的に「メソッド部門」がスタートしました。約3週間経って、現在はどのような作業に取り組んでいるのでしょう。

「今は、このクラブのアカデミーすべてのカテゴリー(U-18、U-15、U-12)について、それぞれチームを観察し、現状を把握しているところです。そのために練習だけでなく、試合も見ています。そうすることによって、現時点でのプレー内容、トレーニング内容を分析しています」

――トップチームのホームゲームの際、ビッグスワンでもオスカルコーチ、佐枝コーチの姿をお見掛けします。

「メソッド部門の仕事として、トップチームにアプローチすることはありませんが、ホームゲームは毎回、見ています」

――現時点で、アカデミーに関して何が見えつつありますか。

「選手たちのレベルは、私たちがやろうとすることを実践するために十分なものがあります。指導に関しては、サッカーの一部、部分を抜き出したトレーニングについては、非常に高いレベルにあると感じています。ただ、それらは“抜き出し”ているので、サッカーの本来あるべき局面からは、離れたものになります。

選手の改善点の一つだと私たちが分析しているのは、コンペティティブ、競争の部分です。それから認知と判断。この2つも、かなり改善の余地があります。

そして少しずつですが、指導者へのアプローチも始めています。今、お話したような側面、戦術的な部分であったり、コンペティティブで勝利にこだわるというところでサポートしていければ、と考えています」

――競争的というのは、チーム内での競争ということでしょうか。それとも対戦相手との競争、またはその両方なのでしょうか。

「私たちが求めるのは、ゲームの中で常に競争的であるということです。ボールを簡単に相手に渡さない。そこでファイトする。そういう部分を求めています。

ボールを奪われないためには接触プレー、体をぶつけ合うことを恐がらない必要があります。和を重んじ、無用な衝突を避けるという日本の文化を考えれば、接触プレーにある種の抵抗があるかもしれません。

ここでいうぶつかり合いとは、もちろんルールを尊重したフェアプレーの範囲内でのことです。その上で、ゲーム内で接触プレーを恐がらない。ぶつかり合うことを恐れず、ボールを奪われない。そういうところに、メソッド部門からアプローチしていきたいですね」

――アルビレックスのアカデミーの子どもたちは、せっかく技術があってうまいのに、プレーが淡泊だという現時点での印象なのでしょうか。

「私たちが求めているゲームの中でのバトルという観点からすれば、少し淡泊ですね」

――今回のメソッド部門の導入は、クラブとして初めての取り組みで、私たちが全体像をつかむには少し時間が必要です。ここで一つうかがいたいのは、メソッド部門の仕事とは、何か一つの確固としたプレーモデルがあって、それを植え付けるというのではなく、むしろ逆なのでは、ということなんです。オスカルコーチはメソッド部門という方法を通して、これまでクラブチームのアカデミーから代表チームまで、さまざまなカテゴリーで仕事をされていますが、関わった先々で均一なサッカーを量産しようとするような、そんな話ではない、と。

「私たちが常にやっているのは、まずは現状の観察と把握です。トレーニング、あるいは試合の分析を通して、選手のプレー、指導者の指導方法の現状を把握する。そこで必ず大事になるのが、アカデミーダイレクターや指導者との対話です。そうした議論を通して、私たちはそのクラブやチームに合ったプレーモデルを、どのような道順で構築するのがベストか考え、実践していくのです」

(つづく)

[プロフィール]
オスカル・ガルシア・ロドリゲス Oscar Garcia Rodriguez / 1988年4月18日生まれ、スペイン出身。2007年、RCDエスパニョールの育成部門監督を皮切りに、育成年代のコーチングスタッフ、テクニカルスタッフを務めるほか、サッカーコンサルティング、クリニックのコンテンツ、プログラム作成に従事。2009年から11年までカタルーニャサッカー協会で育成部門監督の研修コンテンツも作成した。日本でもサッカーサービスサマーキャンプ2012(鹿島・大阪)、川崎FのU-15・U-18チームクリニック、指導者クリニックなどに従事。今年4月、新潟のアカデミー部門の強化・育成を推進するコーチングスタッフとして、サッカー・サービス・バルセロナ社から派遣された。

佐枝篤 Atsushi SAEDA / 1987年6月30日生まれ、愛知県出身。中京大からスペインのアマチュアチームでプレーし、2014年、スペインのUEサン・イルデフォンス・フベニルCのコーチに。現地でいくつかの街クラブの育成年代の指導者を経て、2017年、アーセナルサッカースクール市川U-13の監督に。今年4月、新潟のメソッド部門のコーチ兼通訳に就任した。

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