ニイガタフットボールプレス

【勝手に蹴りやがれ】闘志のかたち


■鋭い爪を持つ男

2002年ワールドカップ日韓大会のとき、1カ月にわたって韓国ラウンドを取材した。当時、ワールドサッカー系専門誌の編集部員だった僕は、リーガ・エスパニョーラ担当ということもあり、スペイン代表の試合は特に胸が高鳴った。

スペイン代表を率いたのはホセ・アントニオ・カマーチョ監督。僕は、本誌で出会ったカマーチョ監督の現役時代について表すフレーズを、かなり気に入っていた。いわく、「爪のある選手」である、と。

レアル・マドリードで15シーズン、プレーした元左サイドバックのカマーチョは、ときには相手エースを“沈黙”させるほどの球際の激しさの持ち主だった。そんな闘志あふれるDFのことを、スペインサッカーではしばしば、「爪のある選手」と呼ぶ――。確か、そんな紹介の仕方だった。

この「爪」は、狙った獲物を絶対に逃さない、猛禽(もうきん)類の鋭いかぎ爪と、闘志のこめられたスパイク裏のポイントとを、僕に連想させた。

■全力で止めに行き、最後の最後で

今年、V・ファーレン長崎から期限付き移籍で加入した島田譲のプレーを高知キャンプで見たとき、『爪のある選手だ!』とすぐさま思った。練習試合はもちろん、練習でチームメートが相手でも、ときに深いタックルで、がっつりボールを奪いに行く。普段からそこまで戦う姿勢を打ち出すプレーヤーは、新潟にはあまりいない。とても新鮮だった。

乱暴に、あるいは短絡的に、ファウル気味に止めようとするのではない。今年で30歳になるボランチは、とことんファイトしながら、それでも守り切れそうにないと見るや、最後の最後で身を投げ出してでも、相手を止めに行くのだ。その姿、雰囲気が、『週刊サッカーマガジン』時代、新潟とともに担当していた鹿島アントラーズの、あるボランチに似ていた。

島田はジュニアユース、ユースと、鹿島で育った。こちらの勝手な思い込みであるのは、重々、承知している。その上で、この「爪のあるボランチ」に、思いをぶつけてみた。闘志をプレーでかたちにできる男、島田譲のインタビューを、明日からお届けする。

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