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【無料公開】蹴球本序評『今日も、Jリーグ日和。ひらちゃん流マニアックなサッカーの楽しみ方』平畠啓史著

 日本のサッカーファンには圧倒的な人気と知名度を誇るお笑いタレント、「ひらちゃん」こと平畠啓史さんによる2作目の著書。サッカーダイジェストの連載『アディショナルタイムに独り言』の7年分のコラムからの選りすぐりと描き下ろしを加えたものが400ページの中にぎっちり詰まっている。さっそく「まえがき」から引用しよう。

 話は変わりますが、試合観戦当日、スタジアムに向かうため、家の玄関を出て、数歩歩き始めた瞬間がなぜか好きなのです。仕事に行く時もコンビニに行く時も、同じ道を歩き、同じ景色を見ているのに、スタジアムに行く時は、いつもと違って見えるから不思議です。街の空気がいつもと違うように感じるのです。雪が降る日もあれば、蝉が鳴きまくる猛暑の日もあります。雨が降る日もあれば、煽られるような強風の日もあります。どんな気象がサッカー日和の必要最低条件を満たすのかはわかりませんが、いつもと同じはずなのに、街の空気や大気が違って感じる、あの感覚を味わえた日こそサッカー日和。

 前作『平畠啓史Jリーグ54クラブ巡礼ひらちゃん流Jリーグの楽しみ方も楽しませていただいたが、よくも悪くもオフィシャル感を前面に押し出しすぎた感は否めなかった。本書に関しては、あえて全Jクラブを平等に扱うのではなく、興味のある対象に縦横無尽にアプローチしている姿勢が清々しい。そのベクトルは国内にとどまらず、「もともと好きだった」というリーガ・エスパニョーラやワールドカップの章もあるのが目を引く。

 マスコットに関しても独立した章がある。さぬぴーとのPK対決や「ミーヤちゃん足つり事件」、キヅールの斬新さやニータン写真集も取り上げられているのがうれしい。そして注目すべきは、2012年から独自に「マスコットアウォーズ」を選定していること。平畠さんには今年2月に東京・渋谷で開催したマスコットイベントにご出演いただいたが、来年もぜひオファーさせていただこうとあらためて決意した次第である。

 それぞれのコラムで扱う対象はさまざま。思わず「そう来るか!」と唸らせる切り口の新鮮さも随所に感じられる。バラけているように見えて、すべてのコラムに共通するのが「マニアック」。ただし平畠さんが言うところのマニアックは、「これ知らないでしょ?」という上から目線ではなく、一定の読者に「わかる、わかる!」と共感させるものだ。その絶妙なラインコントロールは、本書でもいかんなく発揮されている。

 一見するとマニア濃度高めながら、実はファンと同じ目線をキープし続けている。平畠さんの息の長い人気を支えているのは、そうしたさりげない気遣いにあるのは間違いない。それぞれのコラムが楽しめるのはもちろん、平畠さんの「戦略家」としての一面も感じさせる奥深い一冊。この件については当WMにて、近いうちに著者インタビューを試みる予定だ。定価1400円+税。

【引き続き読みたい度】☆☆☆☆★

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