今だから明かせるJ2のキーマン対策法。戦術家・北野誠のスカウティングレポート(J論)

フットボール タイランド

タイは”水掛け祭り”で休暇中。タイリーグ2019序盤戦を振り返る【編集長コラム】(無料記事)

©Football Thailand

初V狙う”美魔女オーナー”のポートFC

今週のタイリーグはソンクラーン休暇で試合がない。「ソンクラーン」とはタイの旧正月のことで、タイ全土で水を掛け合って遊びながら新年を祝うことから「水掛け祭り」としても知られている。元日、中国旧正月、クリスマス(仏教国なのだが……)と、めでたそうなことはとりあえずなんでも祝っておくのがこの国のスタイルだが、そのなかでもソンクラーンは別格。タイ人にとって一年で最も重要な休暇と言っていい。

ソンクラーン休暇までに、T1(タイリーグ1部)は7節を終えている。ACLを戦うブリーラム・ユナイテッドなど試合数が異なるチームが存在するため順位は暫定となるが、第7節終了時点で首位に立つのはポートFC。“美魔女オーナー”としても有名な「マダム・ペーン」こと実業家のヌアンパン・ラムサン氏が本格的にクラブ運営に携わって5シーズン目の今季は、昨季のリーグMVPであるタイ代表MFスマンヤー・プリサーイをバンコク・ユナイテッドから獲得するなど積極的な補強も敢行した。上々の滑り出しを見せたポートFCが悲願のリーグ初制覇にどこまで迫ることができるか、今季の見どころのひとつとなりそうだ。

ポートFCのオーナー、マダム・ペーン。1966年生まれ、”美魔女”っぷりは健在 ©Football Thailand

3連覇を狙うブリーラムを本命として、昨季2位のバンコク・ユナイテッド、同3位のポートFC、「レジェンド」ティーラシン・デーンダーがサンフレッチェ広島から復帰したムアントン・ユナイテッドあたりが絡む優勝争いが予想された今季。そのなかでスタートではっきりと躓いてしまったのがムアントンだ。開幕2連敗を喫し、第5節終了時にパイロート・ボウォンワタナディローク監督が早々に退任。7節を終えて16チーム中15位の降格圏に沈む非常事態となっている。ソンクラーン明け、新監督として招聘されたユン・ジョンファン氏によるチーム再建に注目したい。

存在感を示し始めた細貝とハーフナー

今季も40名ほどの日本人選手がプレーしているタイリーグ。そのなかで、日本代表歴を持つブリーラムのMF細貝萌とバンコク・ユナイテッドのFWハーフナー・マイクは今季の「目玉」だったが、細貝は体調不良もあって合流自体が遅れ、ハーフナーもチームの戦術にフィットしきれずに開幕時は出番のない苦しい時間が続いていた。だが、細貝は第3節のプラチュアップFC戦でデビューすると、以降は3戦連続のスタメン出場中。一方のハーフナーもブリーラムとのビッグマッチとなった第4節でデビューすると、第6節のチョンブリーFC戦、第7節のスパンブリーFC戦と2試合連続ゴールを決めて存在感を示し始めている。リーグタイトルを争うことになるであろう両クラブで、これからそれぞれに重要な役割を担うことになりそうな気配だ。

もう1人、今季からタイリーグで戦う注目の日本人選手がDF北本久仁衛。19シーズン所属したヴィッセル神戸からタイリーグ3部のシーモークFCに移籍して注目を集めたが、こちらはプレー以前の問題に巻き込まれてしまっている。クラブから選手、スタッフへの給与支払いが滞り、3月29日にタイサッカー協会からクラブの一時資格停止処分が発表される事態となってしまった。かつては慢性的に生じていたこの種の問題だが、近頃はあまり耳にすることがなくなっていただけに残念だ。現在のところシーモークFCの今後については白紙の状態で、北本の去就も含めて動向が注目される。

2016年以降、タイリーグは観客動員数の減少が続いている。今季の開幕節を取材していても、最盛期の盛り上がりからのトーンダウンは明らかに感じられた。だが一方で、東南アジアのトップ選手たちが次々とタイリーグに移籍する流れが生まれていることで会場に他国メディアの姿が見られるなど、新しい波が押し寄せていることも実感する。レベル面に目を向けても、昨季のACLでラウンド16進出を果したブリーラムも「独走」とはならず、名門ムアントンでさえひとつボタンを掛け違えれば降格圏に沈む事態も起き得るところを見れば、上下の力は拮抗し、リーグ全体のレベルが底上げされてきているのは間違いないところだ。

いずれにしても、近年のタイの躍進を支えているのがこのタイリーグであることは明白。国民総出の”水遊び”でリフレッシュしたあと、来週から再開される熱戦を楽しみに待ちたい。

「フットボール タイランド」本多辰成

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