「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料記事】【レポート】栃木ウーヴァ 守備の改善見られず、2ndステージ 連敗スタート。

ラインメール青森に逆転負け、試合後スタンドから「喝」の言葉も

 

18回日本フットボールリーグ(JFL)は、19日にセカンド(2nd)ステージが開幕。ファースト(1st)ステージ15位に終わり、巻き返しを期す栃木ウーヴァFCは、初戦で流通経済大に03、続くラインメール青森戦は14の逆転負けを喫し、連敗スタートとなった。

 

26日の青森戦、ウーヴァのキックオフで始まった試合は、互いに相手ゴール前へ攻め込むシーンがあり、見ごたえある展開で進んだ。

先制したのはウーヴァ。前半14分、MF松野大輔が左サイドから蹴り込んだボールをDF髙櫻健太が頭で流し、DF鈴木翼のヘディングシュートがバーに当たって跳ね返ったところをFW平井健太郎が落ち着いて押し込んだ。

そのまま流れを引き寄せたかったが、30分を過ぎたころからウーヴァは徐々に押し込まれるようになる。無失点で折り返したかった前半の終了間際、左CKからミスを突かれて同点を許し、11で迎えた後半3分には、同点ゴールを決められたFWエフライン・リンタロウに連続得点され、あっさり勝ち越された。

その後は受け身の展開で、13分には状況判断を欠いたプレーからPKを許し、試合終了間際には守りの甘さを突かれて失点、14であえなく敗退してしまった。

試合後、スタンドからは「負ける軍団じゃないところを見せてくれ」「このままでは終われないことは分かっているよな」などとあいさつする選手たちに「喝」の言葉が飛んだ。

 

大量失点に堺監督は「すべて自分の責任」

 

ファンの思いも、この日の試合を見ていると納得できる。序盤こそ、まずまずの内容で試合を進めながら、「1stステージで負けた同じ相手に負けるわけにはいかない。運動量を落とさずハードワークすることを心掛けた」(青森・葛野昌宏監督)という相手に主導権を握られてからはなす術なし。堺陽二監督は、「34点取られるチームの幼いやられ方。すべて自分の責任」と守りに改善が見られないことを苦渋の表情で評した。

特に、最も集中力を持ってプレーしなければいけない前半終了間際と後半開始早々の失点については、「一番やられちゃいけない時間帯にやられてしまうのが下位にいるゆえん」と堺監督。次戦以降に向けては「なんとなくプレーするのではなく、1秒、1㌢のところまで意識を持って、目の前の一つ一つのプレーの大切さに気付けるように導いていきたい」と、現状を打破しようとの思いを込めて言葉にした。

途中出場したベテランの FW若林学は「練習していてもやられてしまうのは、こだわってプレーできていないから」と言及。「ファンの応援にこたえるためには、気持ちを込めたプレーをしなくてはいけない」と自身も含めたチームに厳しい言葉を投げかけた。

他チームに比べてあまりにも際立っている失点。これは、プレーの緩さが招いているもので、試合の中でボールに対する意識が相手より劣っている証拠。

 

ウーヴァの選手はプロではない。しかし、JFLという舞台を与えられ、入場料を得て試合を観てもらっているのであれば、ピッチに立っているときは「プロ」と何ら変わりはなく、全力で戦う姿勢を見せなければいけない。それができないのであれば、応援するファン、スポンサーへの裏切り行為になり、全力で戦う気持ちを持てない選手は、JFLのピッチに立つ資格はない。

先日開催された「U16インターナショナルドリームカップ2016」で、日本代表を破ったマリ代表の監督が発した「日本選手の頭の中には『生きるためにはサッカーしかない』という感じはなく、彼らには他の選択肢があるのかなという印象を受けた。マリの選手は違います。彼らにとってサッカーは、本当に生きるための手段なのです」との言葉が印象に残っている。

舞台に違いはあるが、ピッチ上の戦いで勝敗を分けるのは、選手たちのその試合にかける気持ちの強さが、最も影響していることを改めて感じさせられた。

(文 永島一顕)

 

◆ラインメール青森戦の出場選手

GK①安藤 淳也

DF⑤髙櫻健太

DF⑭岡本 洵

DF㉝鈴木 翼

MF⑬石堂 圭太

MF⑲松野 大輝→63分FW㉕若林 学

MF⑳松田 悠佑

MF㉚阿部 琢久哉→46*分DF⑦岩城 正明

FW⑩内山 俊彦

FW㉗平井 晋太郎→74分FW㉘宮下 周保

FW㉛畦地 健太

※46*分はハーフタイムで交代

 

 

ラインメール青森の選手として活躍を続ける元栃木SCの盛礼良レオナルド。昨年7月には日本国籍を取得し、来日したときの最初の地である青森で奮闘を続ける。

ラインメール青森の選手として活躍を続ける元栃木SC(09~10年に所属)の盛礼良レオナルド。昨年7月には日本国籍を取得し、来日したときの最初の地である青森で奮闘を続ける。

存在感見せたレオナルド

 

栃木ウーヴァと対戦したラインメール青森の試合前の練習で懐かしい顔を見つけた。098月から翌年7月まで栃木SCでプレーした盛礼良(もれいら)レオナルド。

栃木SCではFWとしてプレー。その後は、北九州→JAPANサッカーカレッジ→ブラウブリッツ秋田と渡り歩いて昨年7月には日本国籍を取得。今季から青森の一員となった。

青森山田高卒で「日本に初めて来た土地に戻ったことはうれしいし、充実感を持ってプレーしている」とレオナルド。30歳となり、プロ契約でもある現在は、チームでは精神的支柱となっている。ウーヴァ戦では、後半27分から途中出場、ピッチ上で最も大きな声を出してチームを鼓舞。自身もチーム4点目のゴールを決め、存在をアピールしていた。

「まだまだ元気な姿を見せられる」と選手として奮闘する一方、他の選手の模範とならなければいけない立場でもある。レオナルドは「チームが上に行けるように、練習から責任を持って取り組んでいく姿勢を見せていきたい」と、将来的にはJ昇格を目指すチームをしっかりけん引していこうとの思いを話した。

「とにかくあきらめないチーム。皆が練習から全力を尽くしているし、監督もそれを認めてくれている」とチームに誇りを持つ。ウーヴァ戦の逆転勝ちは、何よりも、その言葉を証明した。

栃木にゆかりのある選手が、別天地で活躍してくれることも、うれしい出来事の一つである。

 

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