松沢呉一のビバノン・ライフ

『マゾヒストたち』への批判の声・不満の声—『マゾヒストたち』[無料記事編 10]-(松沢呉一)

クラッシュ・ナイトとエロ・リテラシー—『マゾヒストたち』[無料記事編 9]」の続きです。

 

 

 

 『マゾヒストたち』に反発する人たち

 

vivanon_sentence隠花植物と表現された同性愛者がオーバーグラウンドに出てきた時に反発する当事者たちがいたように、日陰者であることに意味を見出しているマゾヒストの中にも、『マゾヒストたち』の出版を快く思わない人たちがいるかもしれない。「マゾは表に出るべきではない」という美学から、「マニア雑誌でやっている分にはいいとして、新潮文庫で出すのはやりすぎだ」と。

規制の中で生じたビジネスや感覚が足を引っ張る—そろそろ刑法174条(公然わいせつ)と175条(わいせつ物頒布)を見直しませんか?[19]」の流れでそんなことを書いてみましたが、心配は無用です。つうか、あとできることは炎上くらいの私にとっては、残念ながら、そんなことは起きそうにない。

マゾはそれでメシを食っているわけではないので、パイの食い合いになるわけではないことが大きい。金がからむと、人間ははしたなくなります。ヤプーズマーケットの山田龍介は例外ですが、なりゆきでメーカーを始めただけで、マゾ自体で食っているわけではないですし。

M男たちの欲望は女王様との関係で完結するので、他の存在を気にしない人の方が多くて、いたぶられる役でショーに出ているようなM男さんたちの間でライバル意識が生じることがあるくらいかと思います。「なんであいつは一本鞭をやってもらったのに、オレはバラ鞭だけなんだよ」みたいな。それも表面に出ることは稀です。

むしろ、その存在がクローズアップされることがないので、他者の話に興味を抱く人の方が多いのではなかろうか。「ビンタされるのはサイコーだが、金玉を蹴られて何がいいのかさっぱりわからん」とか「クラッシュ系は理解できん」といったように、それぞれに違いすぎて、同類の間で生じやすいライバル意識や嫉妬心も生じにくいかと思います。

また、各ジャンルのトップクラスの人たちが出ているため、「私の方がもっと変態だ。どうして話を聞かないのか」という方もあまり出て来ないでしょう。もしいらっしゃったらご連絡ください。「スナイパーEVE」はなくなってしまったので、「ビバノン」で紹介させていただきます。ただし、妄想自慢はいりません。実体験を重視です。

※海外には想像を絶するフェチがいるのではないかと思ったのですが、なかなか見つからない。しかし、イギリスのラバー・フェチ用グッズはさすがに目を見張るものがあります。英ebayより。完全にマゾ向け。一人プレイもできます。

 

 

世界は広い

 

vivanon_sentence「私の方がすごい」とは逆に「マゾがみんなあんな派手な人たちばかりだと思われると困る。私のように顔面騎乗だけで満足している地味なのもいるのだ。60分コースで入って顔騎だけだぞ」という方もいらっしゃるかもしれない。それはそれで話を聞きたい。

顔騎マニア窒息マニアの人は『マゾヒストたち』に出てこないし、連載でも取り上げてません。オーソドックスな鞭マニアもや緊縛マニア医療マニアも取り上げてません。

比較的ポビュラーな人たちは後回しでいいと思ってしまっていたためです。聞いたことのない性癖の方が話を聞きたくなるじゃないですか。もっと連載が続けばやがては初心に返って、そういう人たちも登場したのでしょうけど、その前に連載が終了してしまいました。

咀嚼マニアも、クラッシュ系の中に軽く出てくるだけでした。血はつきものとは言え、自分の体から血が流れ出るのが好きなブラッドマニアも取り上げてない。今はもう少なくなっている切腹マニアも出てません。

フェチ系はまだまだいろんなのがいます。それらの人が見つかっていれば話を聞いたのですが、連載中には出会えませんでした。

マゾヒストたち』に出ている人たちは、SMクラブやSMバーに出入りしていて、だからこそ接触できたわけですが、そういった場所には行かず、「家で自縛し続けて半世紀」みたいな人もいるはずです。どれもこれも「ビバノン」で紹介させていただきますので、ご一報ください。

私が一番話を聞きたいのは名古屋のユッキーか、『マゾヒストたち』のインタビュー内で出てくる王様マニアかな。

王様マニアは女王様とペアになりたいマニアです。その存在は私も聞いたことがあって、相手をした女王様が「ラブホの窓を開けて、一緒に国民に手を振らなければならなかったのが恥ずかしかった」と言ってました。王様はどうやら全国に何人かいるみたいです。日陰者と自認する王様はいないので、たぶんインタビューは受けてくれるでしょうけど、王様マニアは自分に相応しいパートナーである女王様を求めているだけで、マゾなのかどうかわからんです。

こうやって挙げてみると、まだまだ興味深い人たちがいます。

※この透明部分は伸縮するようです。肌にくっついて苦しそう。だからいいのか。これも英ebayより。

続きます

 

以下はテンプレです。

 

 

世界はマゾでできている—松沢呉一著『マゾヒストたち』(新潮文庫)発刊記念

マゾしか出ません!!

 

 

 

本年5月をもって休刊となった「スナイパーEVE」で連載していた「当世マゾヒスト列伝」が『マゾヒストたち』として新潮文庫に登場。

18人の選び抜かれたマゾ男の精鋭たちのインタビューとコラムで構成された希有なM男たちの肖像。
その発刊を記念して、マゾヒストたちの生の声を聞きます。

女王様がいてのM男ですが、女王様は出ません。
M男が主人公のイベントです。

 

【出演】
松沢呉一(生活マゾ)

【スペシャルゲストのマゾたち】
クニオ(露出・身体改造・性豪・包茎自慢の変態)
山田龍介(元キックボクサー・ヤプーズマーケット代表)
紅葉(盲目のピアニスト・マゾ)

予定していたゴン太さんは欠席となりました。その代わりに変態界の大物が急遽出演決定。『マゾヒストたち』には登場しない人物ですので、当日までお楽しみに。

※本イベントは16禁です。15歳以下の方はご遠慮ください。

 

 

【会場】

高円寺パンディット

☎︎090-2588-9905


 

【日時】

2019年11月17日(日)

開場/ 13:00
開演/ 13:30

2時間半程度を予定しています。

 

【参加料金】

<お得な本付き料金>

前売 ¥2,500  当日 ¥2,600

<本なし料金>

前売 ¥2,000 ¥当日 ¥2,500

※いずれもドリンク別です。

予約はパンディット(二種の予約は入口が別になってます)

またはFacebookのイベントページで「参加予定」をクリックするだけで予約扱いになります。当日、どちらかを選択のこと。

 

ゲストのプロフィール

 

クニオ 思春期から裏山でセックスを始め、十代でストリップ劇場の楽屋まで出入りするように。以来、全国のストリップ劇場を回り、同時にトルコ風呂にも行くようになった。自身がマゾという自覚はないが、性器に傷をつけて黴菌をつけて化膿させるのが好きで、SMショーにもMとして出演している。自身が身体改造マニアという自覚はないが、ピアスを体中に入れて銭湯に通っている。包茎が自慢で、包茎サークルのメンバーでもある。

山田龍介 ブロのキックボクサーだったが、マゾに目覚めて、名古屋の北川プロのビデオにデビューし、多数のビデオに出演。最多本数に出たマゾ男優かもしれない。結婚し、子どももいたが、家庭を捨てて、マゾとして生きることを決意して上京。浅野ナオミ女王様の奴隷として軟禁生活を送ったあと、監禁専門ビデオメーカー・ヤプーズマーケットの代表に。同社の出演者はヤプーと呼ばれ、経営者・制作者にしてヤプー0号として出演もしている。

紅葉(もみじ) 幼少期に事故で両眼を失明。盲学校に通いながら、ビンタをされたい願望が高まる。数学専攻で国立大学に進んだあと、ピアノの勉強のため、ポーランドに留学。帰国後、自身の欲望を抑えられず、単身、SMクラブに乗り込み、数学、ピアノに続いてマゾとしての実践を開始、V&Rの作品に出演してマゾ男優としてデビュー。本に掲載されたインタビューの段階では独身だったが、その後、結婚。当日はマゾの結婚生活についても聞けるはず。

 

 

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