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太い幹を育てよ。吉本一謙の提言

クラブ全体に基準なり力点と呼べるものがない。あるいはそれらがあっても貫徹できなかったことが、2016年と17年の二年に渡る不振の一因ではないだろうか。
移籍市場の上位から順にいい選手を獲ってきたという点では買い物上手と呼べる補強であったとしても、それでチームづくりが終わるわけではない。彼らが加入後にフィットさせるための手間がかかるのであれば、裾や丈を直す必要がある衣服のように、その調整にもっと注力するべきだった。サンフレッチェ広島であれば選手の格にとらわれず、すぐに機能する選手をピンポイントで獲得するだろうし、鹿島アントラーズであれば高卒の選手のみならず移籍加入の選手も少しずつクラブの気風に慣れさせていくだろう。FC東京も自分たちなりの考え、方法論を持ち、実践しつづけなければならない。

安間貴義前監督はJ1最終節後の記者会見で「すぐに『来年、来年』と言ってしまうが、やるべきことを順序立ててみんなが望んでいるタイトル(獲得)に向かっていかなければいけないと、最後の光景を見て思いました」と述べた理由について、あらためてこう言っている。
「たとえばサッカーの選手はよく修正をしないで『次、次』と言う。しかしミスの原因がわかっていないのに次に行っても同じミスを繰り返すことになる。何を見据えてやるか、何をめざすのか。それをしっかりしないと」
そしてクラブとチームがめざすところを集約しないといけない。
「山の登り方にはいろいろあっていいと思う。ただ、めざしている場所はいっしょじゃないといけないと思います」

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登り方とめざす場所についてこの二年間悩んできた選手たちのうち、誰に話を聞こうかと考えたときに、思いいたったのは吉本一謙だった。在籍期間の長い選手ゆえの心労もあるが、だからこそ言えることもある。

2016年は羽生直剛と高橋秀人が去り、2017年は石川直宏と徳永悠平がそれぞれ引退と移籍で東京から離れた。東京をよく知る選手が少なくなった現在、よりいっそう中心的な存在としてチームを牽引していくことが求められるのでは――と米本拓司に問うと、彼は「ぼくだけではなく、そういう気持ちをチーム全員が持たなければだめなのかなと思います」と答えた。その米本と同じような気持ちを抱ける選手のひとりが、早々に契約更新を発表した吉本だ。
12月6日、TwitterにPostしたメモには「選手達ももっとブーイングされるべき結果だったと思っています」という一文があった。
のち吉本にこのメモを掲載した理由を訊ねると、何が問題だったかを考え抜いた結果が、東京に対する熱い想いとともに溢れてきた。2018年の基準値と行き先を考えるうえで一聴に値する言葉の数々をお届けしよう。

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――どういう想いでTwitterにメモをアップしたのでしょうか。

「このまま何も言わずにいたら自分たちの意見も伝わらないと思ったので。いろいろな考えのひとがいるから、どういう意見が返ってくるか、反応を知りたかったということもあります。サポーターの方にもチームを取り巻く環境を考えてもらい、みんなで上をめざしたい、と」

――「もっとブーイングされるべき結果だった」という文言もありましたね。

「選手はサポーターにもっとブーイングされるべきだと自分は思いました。最終戦のセレモニーでは大金(直樹)社長が矢面に立つかたちでブーイングの対象になってしまいましたけれども、この結果は自分たち選手の責任でもある。もっと選手がブーイングされたほうがチームとしてはよくなっていくんじゃないのかな、と。最後に(徳永)悠平さんとナオさん(石川直宏)を気持ちよく送り出すための雰囲気づくりは大事です。でもそれとは別に、選手もブーイングされるべき結果だったと実感している、そういうことを書きました」

――なかなかひとくちに失敗の原因を語るのは難しいと思いますが、その整理はできましたか。

「これは強化部ともしっかり話し合って確認したことなんですが、まずは選手に原因があったと思います。オレとかヨネ(米本拓司)、森重(真人)選手といった、下から育ってきた生え抜きであったり、在籍歴の長い選手たちが、もっと強いリーダーシップを持って『FC東京はこう』だと示せたら、それを基準に、たくさん入ってきた新しい選手もいっしょに戦えたと思う。泥臭さを採り上げてクラブのアイデンティティを『FC東京らしさ』と言うけれど、それがなんであるのかが明確に全員に知れ渡ってはいないわけで。ひとくちにFC東京らしさと言っても、オレが思っているFC東京らしさがあるように、ひとそれぞれ思い描いているものがちがうはずです」

――あらためて吉本選手が考える“FC東京らしさ”とは。

「『最後まで泥臭くからだを張って、ミスをしても切り換えて、チームのために』。それがオレの思っているFC東京らしさだったけれど、その基準を示すことができなかった。個人としては出したつもりだけど、チームのみんなに示すことができなかった。それは昔から東京にいる選手が、なんとかしてなじもうとしている新しい選手に示す責任だと思います。
たぶん結果を出すチーム、たとえば鹿島などはそれができているんですよ。選手もスタッフも、新たに来たひとたちをクラブの色に染める。ベースがあるうえに、新しく来たすばらしい選手たちの長所を加える。まずそこがだめだったということは認めないといけない」

――なるほど。その次には?

「自分以外の責任に言及するのは決して本意ではないし気持ちのいいことではないけれど、あえて言うと、ひとそれぞれやりたいサッカーがちがうなかで、チームとしてどういうサッカーをめざすのかをはっきり統一できなかったという問題がありました。チーム全員で(めざすものを)示せたら、この結果にはなっていなかった。
そしてこれだけの選手が揃っていたら、誰かは絶対に試合に出られない。そうした試合に出られない選手が折れかけたとき、チームのやり方に合わせて競争に加わっていこうとみんなでひとつの方向に持っていけたら、不満をいだきながらも踏みとどまれたと思うんです」

――主に3つの問題があったんですね。

「どれかひとつでもちゃんとしていたら、もっと踏みとどまれた。難しいけど、うまく噛み合えば上位に入っていたと思うし、もっと踏ん張れたかな、というのはあります。もちろん自分も反省しなければならないですし、それぞれが2017年にだめだったことをひとつずつ反省しないと。
あえて繰り返し自己批判をしますが、自分を含めて選手はほんとうにだめだったと思います。選手はその不出来を感じてよくしていこうという心構えにならないといけないですし、みんなが反省を活かして変わっていかないと、改善していけるはずがない。そう思っていることは包み隠さずクラブに話しました。
それぞれサッカー観が異なると同時に、どれも正解でもある。大事な部分をなくさずに選手個々の能力を最大限出せるようにしたかった。主張の仕方も大事だと思うんですよね。お互いをリスペクトしないと、主張してもお互いに納得できないし。選手にかぎらず、いいやりようはあったのではないかと思います」

――自己実現をモチベーションにしている場合もあれば、クラブに対する想いがモチベーションになっている場合もある。そうしたもろもろのちがいを無理になくすのではなく、チームが勝つ方向に揃えられればよかったのかなと個人的には思いました。

「クラブに対する“好き”の度合いはひとによって重みがちがう。ステップアップしたいというのもモチベーションには変わりないわけだから、それはそれでいい。でもせっかくの意欲をどこかでチームのために活かせるようにするためには、チームの太い幹になる部分が必要だと思います。それをオレたちがもっと示さないといけなかった――というのがさきほどの反省です。今後、そういう役割がもっと求められるし、自分自身ももっとやらないと。このまま終わりたくない、この二年間にあったことを活かさないで終わったら何も残らない。最高の成績を残したシーズンにもいろいろあったけれど、勝つことでまとまっていた。やっぱり“勝つ”というのがいちばんだと思うんですよね」

――勝つことを目標にして、そこからやるべきことが決まっていく。

「そうですね。東京という育成を重視したクラブで、育成の代表として自分がしっかりやらなきゃという誇りと責任感をオレは持っています。仮にユース出身の選手が実力でポジションを奪い取って多く活躍して勝てるのであれば、もちろんそれはうれしい。でも、ユースの選手が何人ピッチにいるかということよりも、勝てるか勝てないかということのほうが大事ですよ。だからその時点での実力で11人が決まったときに、たとえ自分を含めてユース上がりがゼロになる瞬間が来たとしても、それでも優勝できるほうがいい。プレーもそうです。華麗なパスをしようが、引いて守ろうが、みんなが好きなのは勝つサッカーだと思うんですよ。オレの考えでは。そして、勝つためにひとつにならなければいけなかったと思うし、これだけ多くの個性があって能力が高い選手をまとめられなかった責任をすごく感じています」

――勝って何かを掴むという経験をしないと、勝ち方もまとまり方もわからないのかもしれません。いくら力んでも、のれんに腕押しで、力が伝わっていかないので、試合を観る側にはもやもやとした消化不良感が残る。

「自分たちが何もなしえていないということを、もう一回考えないと。たとえば、磐田とか、清水とかいったチームと対戦するときには、周りも勝たなければいけない相手だという雰囲気になっているし、ぼくたちもそう思って試合に臨んでいると思うんですけれど、彼らはリーグのタイトルを獲っているわけで。自分たちはカップ戦のタイトルは獲ったかもしれないけれども、何も残していない、リーグを獲っていないチームであるわけですから。周りからの期待で(優勝するかのような)雰囲気になってしまっているというところはあると思います。だからと言って卑屈になれというわけではもちろんなく、誇りを持っていないといけないけれど、自分たちはまだリーグのタイトルを獲っていないという事実を頭のなかに置いてやらないと。いまの東京はハングリー精神を持って戦う、挑んでいくチームなんです。結局リーグ戦では4位が過去最高の順位だし、2ステージ制でもファーストステージ2位が最高の順位であるわけだから。
どんなサッカーであっても勝っているときのほうが楽しいし、雰囲気がいい。ひとぞれぞれあると思うけど、個人的には勝つサッカーをしたいから、そのために変わらないといけないとは、すごく思いましたね。ことし(2017年)は何もできずに試合が終わる、そんな試合がほんとうに多かった」

――2018年、どうしていきますか。

「もう、変えるしかないですよ。自分自身については、もう一回役割をしっかりまっとうして、チームをまとめたいと思っています。“勝つ”という目的のためにひとつにならないと。モチベーションについては、さきほども言ったように、おれみたいに『東京で優勝したい』というのがあってやっているひともいるし、それこそ自分のステップアップのためにやっているひともいるだろうけれども、誰であっても勝つことがいちばん評価につながると思うから、チームのために戦える選手が集まって、そういう選手でひとつになって、戦いたいです。
これからも絶対に苦しいとき、いろいろな問題が出てくるだろうけれど、そのときに、クラブと話すときにも自分が先頭に立ってできるような、そういう存在になっていかないといけないと思います」

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書評
http://thurinus.exblog.jp/21938532/
「近未来の東京を舞台にしたサッカー小説・・・ですが、かなり意欲的なSF作品としても鑑賞に耐える作品です」
http://goo.gl/XlssTg
「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリーとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

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