後藤勝責任編集「トーキョーワッショイ!プレミアム」

Jリーグは信頼できるか。クオリティの向上にこだわるチーム同士の激突、その読後感【コラム/無料公開】

J1第14節ではベガルタ仙台とサンフレッチェ広島、FC東京と北海道コンサドーレ札幌という、今シーズン、たしかな進化を遂げているチーム同士の対戦があった。5月12日に開催された前者の試合は、最後に仙台が力尽きるようにして広島にゴールを許し逆転されたが、途中までは広島に土をつけるのではないかという期待感があった。そして翌13日に開催された東京と札幌の一戦は両チームがボールにかかわりプレーしようという姿勢が明確にあり、なかなかボールが外に出ず途切れない、そして互いに隙を見せない試合で、東京の長谷川健太監督が「非常に緊迫感のある試合」と言ったように、スコアは0-0ながら眼を離せない展開がつづいた。かつての長谷川監督率いるガンバ大阪とペトロヴィッチ監督が率いる浦和レッズの戦い、あるいはランコ ポポヴィッチなど策を立てて対抗しようとした東京とサンフレッチェ広島あるいは浦和との戦いのように、フットボールをしようとしていた、そのような読後感がわいてきた。

札幌のミハイロ ペトロヴィッチ監督は「両チームとも非常にいいゲームをしたのではないかと思っている」と、話を切り出した。
「互いにハードワークし、テンポの速い、球際の激しいゲームになったと思う。0-0というスコアではありましたけれども、両チームともチャンスをつくる非常に見応えのあるゲームだったのではないか。最終的に引き分けという結果は妥当だった」

これに対して長谷川監督が呼応するように「楽しかった」とポジティヴな印象を語った。
「正直に楽しかったです。久しぶりにペトロヴィッチ監督とやって、札幌も好調ななかでの試合だった。そういう意味では非常に緊迫感のある、お互いにがっぷり四つの試合で楽しみながらやらせてもらいました。0-0の試合でしたが、お互いのよさを出し合ったという意味で、観ているファン・サポーターにも面白いゲームを見せることができた」

よさを出したと言える見せ場ははっきりしている。フォワード以外のサイドの選手が積極的にシュートを撃ち、ディフェンスでは思い切り寄せていき、そしてイングランドプレミアリーグにも似てダイナミックなアップダウンがあった。長谷川監督は、シュートに関しては室屋成と大森晃太郎の名前を挙げた。サイドバックとサイドハーフがシュートの意識を持っていれば、相手にとっては脅威となり、観る者にとっては娯楽となる。
長谷川監督はディフェンダーも評価した。
「ディフェンスラインは高い選手に対して対応できていたと思いますし、危ないシーンもありましたが、しっかりとからだを寄せて、最後の場面は自由にヘディングをさせなかった」
言うまでもないが東京のセンターバックは日本代表と韓国代表クラス。だからこそ国際水準を諦めない追求ができているのかもしれないが、どのカテゴリーだろうとサッカーはサッカーなのだから、本来はやるべきプレー、目標とするサッカーに大きな差はないはず。代表選手がいなかろうと、J2だろうとJ3だろうと、両チームの監督からこのような感想がわいてくる試合をめざすべきなのではないか。

日本のサッカーは欧州に比べて遅れている、大きな隔たりがある、という論調が存在する。それは事実だ。しかしだからと言って何もしないでいたらよけいに差は拡大し、停滞する。これ以上引き離されず、発展させるためには、意欲を持つ有志が、高い目標を掲げてより強いチーム、おもしろい試合を志し、日々のトレーニングに臨むしかない。
以前、髙萩洋次郎に、世界あるいはアジアに出ていくためにはどうすれば──と訊ねたときも同様の答えを返された。結局はJリーグが、そしてそれぞれの所属チームでのおこないがACLや世界の舞台につながっている、だから一つひとつの試合、練習、プレーに全力を尽くさなければならないのだ、と。

最先端のサッカーに精通する指導者を連れてくる必要があるのかもしれない。その反対に、欧州とはまったく異なるアプローチで強くなる方法を探す必要があるのかもしれない。これが絶対だ、という正解はない。それでも、そうした答えを探すあいだにも時間は過ぎていき、トレーニングや試合の機会はやってくる。

ならば、まずは仙台と広島、あるいは東京と札幌のように、意欲のある者同士がスウィングする試合を増やしていくしかないだろう。勝敗の結果や順位を別にしてもよいゲームだったと言える試合をすることがマイナスになるわけがない。
中長期的に見て日本のサッカーをどうしていくべきかを考える人々はどこかに存在する。Jリーグの現場は、眼前のセッションにすべての力を傾注することから始めるしかない。

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書評
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「近未来の東京を舞台にしたサッカー小説・・・ですが、かなり意欲的なSF作品としても鑑賞に耐える作品です」
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「クラブ経営から監督目線の戦術論、ピッチレベルで起こる試合の描写までフットボールの醍醐味を余すことなく盛り込んだ近未来フットボール・フィクション。サイドストーリーとしての群青叶の恋の展開もお楽しみ」
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◎後藤勝(ごとう・まさる)
東京都出身のライター兼編集者。FC東京を中心に日本サッカーの現在を追う。サカつくとリアルサッカーの雑誌だった『サッカルチョ』そして半田雄一さん編集長時代の『サッカー批評』でサッカーライターとしてのキャリアを始め、現在はさまざまな媒体に寄稿。著書に、2004年までのFC東京をファンと記者双方の視点で追った観戦記ルポ『トーキョーワッショイ!プレミアム』(双葉社)、佐川急便東京SCなどの東京社会人サッカー的なホームタウン分割を意識した近未来SFエンタテインメント小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』(カンゼン)がある。2011年にメールマガジンとして『トーキョーワッショイ!MM』を開始したのち、2012年秋にタグマへ移行し『トーキョーワッショイ!プレミアム』に装いをあらためウェブマガジンとして再スタートを切った。

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