【ランダムフォーカス】次に向けて
7月16日に発表された阪野豊史選手の松本山雅FCへの移籍について、高山明泰強化部長がその経緯と今後の補強の考え方などを説明してくれました。
松本から阪野選手を完全移籍で獲得したいとの話があったのは7月に入ってから。「そりゃないっすよ」というのが率直な思いだったと言い、もちろん慰留を前提に話をしました。
「とても必要な選手なので、我々のチームでプレーしてほしいと伝えましたし、契約面も含めて、クラブとしてやれるだけのことは全てやって慰留に努めたつもりです。けれども、彼自身がJ1でキャリアをスタートしてJ2で5年プレーして、もう一度J1の舞台でプレーしたいという思いをずっと持ち続けていた中で今回の話が来た。我々もいろいろな形で話をしましたが、最終的には本人が今すぐにJ1にチャレンジするという結論を出したということです」
阪野選手自身、山形で昇格して来年J1を戦うことの意味や、チームが好調の状態の中で出て行くことの後ろめたさも含めて考えた末の決断だったようです。契約上の条件は全てクリアした上での移籍であり、結果的に移籍金も残りましたが、「移籍金が入るから手放したわけではない。残ってもらいたいというのが一番だった」と高山強化部長。それはこれまでの阪野選手の貢献を考えれば当然のことでしょう。
しかし、これはもう終わった話。「残念だけど、ルール違反があったわけでもなく、センチメンタルな感じはもうない。もう次に向けて、いろいろなことを考えてやっている最中」と話し「(新たに)選手を獲得することは考えている」と明言しました。
「阪野選手が得意としていることもあれば、そこまで得意としていなかったものもあるわけで、逆の考え方をすれば、そういう新たな要素をチームに加えるきっかけになるのかなと思っています。前半戦を戦って、もっと高まっていけばいいなという部分はある。そこの要素を足せる選手を加えたいと思っています」
具体的なことはまだ話せないとしながらも、「チームの攻撃のクオリティをより高められる選手」に照準を合わせ、ある程度話が進んでいる様子も匂わせました。
阪野選手も既に松本で試合に出場し、念願だったJ1のキャリアを再開しました。山形もまた、エースを引き抜かれてもなお昇格を手繰り寄せる底力を、クラブの総力を挙げて見せなければなりません。
文・写真:頼野亜唯子