「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「前半はチームとして完璧にやれていた」(大津祐樹)。ウーゴと仲川の得点でリードを広げ、終盤は鹿島の猛攻をしのいで決勝戦進出の切符を手にする [Lカップ準決勝2nd 鹿島戦レビュー]

 

第1戦で得たアドバンテージに関係なく、前半はほぼパーフェクトな内容だった。この試合でもファーストディフェンダーとして相手ボールを追いかけ続けた大津祐樹は「前半はチームとして完璧にやれていた」と満足げに話す。この時点ではトータルスコアなど必要以上に思考をめぐらせることなく、マリノスは普段通りに戦った。

 最初にゴールネットを揺らしたのは20分。松原健の見事な縦フィードに仲川輝人が抜け出し、グラウンダーの折り返しを天野純がダイレクトで狙う。シュートは相手DFにブロックされたが、そのはね返りが天野に当たってウーゴ・ヴィエイラの下へ。ウーゴは振り向きざまに右足を振り抜き、ゴールを射抜いた。

34分の追加点は、マリノスの真骨頂と言っていい。相手のプレッシャーをかわしつつ、ボールを持った松原健が中央の天野へ送ったパスが攻撃のスイッチに。「あのパスが今のサッカーの醍醐味」と右サイドバックはニヤリ。マリノスのポゼッションが最も効力を発揮するシチュエーションで相手陣内へ。

中盤に広大なスペースが広がる状況で、ボールを受けた天野はすかさず左サイドの遠藤渓太へ展開。その外をオーバーラップした山中亮輔が相手DFを引きつけ、中央寄りにできたスペースに走り込んだのは天野。相手ペナルティエリア内からの鋭い折り返しに走り込んだ仲川の仕事はゴールに押し込むだけだった。

ウーゴとともに得点を量産している仲川は「あれがマリノスのサッカーで、監督が目指しているゴール」とプライドをのぞかせた。遠藤がボールを持った時点で鹿島アントラーズの最終ラインに対して5対4の数的優位を作り、そこで生まれたギャップを突いて追加点が生まれた。完璧にデザインされたゴールによって、さらに有利な状況を作り出すことに成功した。

 

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 しかしながら、このまま終わらないのが鹿島の強さであり、ホーム&アウェイ方式の怖さ。62分、飯倉大樹がショートパスで始めたゴールキックを土居聖真にカットされ、予期せぬ形で失点してしまう。あろうことか自分たちのミスから反撃の狼煙となる得点を許したのだから、風向きが一変するのも当然だろう。70分には2失点目を喫し、リードの余裕はなくなった。

それでも逞しさを増したマリノスは踏ん張ることに成功。マイボールを簡単に失う稚拙さものぞかせたが、自陣での体を張った守備は決勝進出への飽くなき執念と言い換えていい。自身の過失によって苦しい展開に持ち込まれた飯倉は「最後は押し込まれたけど強いメンタルでプレーできたと思う」とチームの成長を語る。

1勝1分で鹿島を破り、準決勝を突破した。難敵を打ち破っての決勝進出には価値がある。そしてアンジェ・ポステコグルー監督は「自分がここに来たのはタイトルを獲れるようなチームにするため」と言い切った。しびれるような成功体験に王手。ファイナルの舞台へ、堂々と歩を進める。

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