「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

3-0の完勝がモヤモヤを吹き飛ばす。1ヵ月以上も遠ざかっていた公式戦白星には、たくさんのポジティブ材料が詰まっていた [J6節 浦和戦レビュー] <無料記事>

 


放ったシュート数こそ11本と驚くような数字ではないが、手元の集計で決定機は約10本あった。シュートにつながらなかったシーンもカウントしているとはいえ、相手ゴール近くに迫った多くの場面が得点チャンスだったのは間違いない。浦和レッズに脅威を与え続けた仲川輝人が「自分を含めてちょっと外し過ぎた」と苦笑いを浮かべるのも無理はない。

そのうち最初の決定機を得点に結びつけたわけだが、振り返ってみると最も偶発性の高いプレーだったのがサッカーの面白さだろう。仲川が右サイド奥のスペース出したボールは、戻りながら対応した山中亮輔の左足に当たり、これが浦和レッズゴール前を絶妙なコースで横断。槙野智章もマウリシオも、そしてGK西川周作も届かないレーンを通ったボールは、ファーサイドに走り込んでいたマルコス・ジュニオールにとって絶好のパスとなった。

序盤の先制点によって、浦和は攻守のバランスを保つことが難しくなった。大分トリニータやサガン鳥栖のような徹底は見られず、守備をするエリアが曖昧になれば、それはマリノスにとって願ってもない展開。31分にエジガル・ジュニオが左太もも裏を痛めるアクシデントに襲われたが、試合展開や流れにおいてはまったく影響がなかった。

喉から手が出るほどほしかった追加点は61分。三好康児が抜け出したプレーが西川にストップされ、こぼれ球に反応した遠藤渓太のシュートも再び西川に防がれた。しかし相手選手にこぼれたボールを、遠藤はあきらめずに追った。一瞬たりとも足を止めることなく守備に気持ちを切り替えてボールを奪い返すと、それをマルコスが左足で決める。この日の2点目を決めたマルコスもあっぱれながら、お膳立てした遠藤も称賛されるべきだろう。見た目も綺麗なドリブルシュートがすべてではない。

 

70分には広瀬陸斗のJ1初ゴールが決まる。浦和ユース出身の男の一撃にファン・サポーターは歓喜したが、そのきっかけを作ったのは松原健の粘りだった。相手陣内右サイドで五分五分のボールを手放さず、味方へとつなげた。美しいクロスボールからのアシストではなくても、地味ながら即効性あるプレーがダメ押し点の呼び水となる。

 

 

3-0というスコアを実現できたのは「チームとして全員がハードワークしていた」(仲川輝人)からこそ。パク・イルギュや喜田拓也は常に前方向へボールを運ぶことで勇気を示し、畠中槙之輔とチアゴ・マルチンスのセンターバックコンビはチームに安定をもたらした。天野純はやや低い位置からゲームコントロールの先導役を担い、仲川や三好康児はゴールこそ決められなかったが数多くの決定機を演出した。

展開に恵まれ、86分からはルーキーの山谷侑士も途中出場。その2分後には仲川からのパスを受け、迷わず右足を振り抜いてリーグ戦初シュートを記録した。惜しくもGKに阻まれたものの、臆することなくプレーしたことが次につながる。ストライカーポジションの選手に負傷が続いているのはチームにとって不安材料なのだが、山谷個人にとっては大きなチャンスが到来している。

モヤモヤを吹き飛ばす勝利は3-0の完勝で。1ヵ月以上も遠ざかっていた公式戦白星には、たくさんのポジティブ材料が詰まっていた。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ