「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

(監督人事について) 「時期的に考えても、さぁこれからどうしよう、という段階ではない」(嘉悦) [J32節神戸戦レビュー] 藤井雅彦 -1,172文字-

これがいわゆる“消化試合”というものだろう。互いに優勝や残留という懸かるものがなく、完全なる中位に甘んじている。さらに両監督ともに今季限りでの退任がオフィシャルに発表され、現体制での終焉が決まっている。『プロとして』という言葉以外にモチベーションを高める材料はない。

4-3-2-1_ファビオボランチ マリノスとヴィッセル神戸は「システムもボールの奪いどころも同じ」(樋口靖洋監督)で、比較的似ているチーム構成だ。ただ、この日の先発メンバーを見渡したときに、若干ながら個の能力に勝るのが神戸で、外国籍ストライカーと大黒柱・中村俊輔を欠くマリノスは見劣りする陣容だった。

結果的に神戸は個の力に頼るだけのサッカーで、チームとしての方向性はほとんど見えなかった。対して、マリノスはわずかながら指針がある。以前のようなハイプレス&ショートカウンターは影も形もないが、遅攻には進捗が見られる。ダブルボランチを形成する兵藤慎剛とファビオがバランスを保ち、左サイドでは下平匠が欠かせない存在感を発揮している。

そんな展開で、決めるべき選手と意外性あるゴールが生まれれば、勝利するのも頷ける。下平が起点となり、齋藤学が絶妙な折り返しを送ると、走りこんだ1トップの伊藤翔は巧みに合わせてゴールネットを揺らした。後半には、藤本淳吾の正確なクロスを駆け上がった兵藤が頭で決める。凡ミスから失点したものの、トータルでは妥当なスコアに終わった。

 

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神戸4-2-3-1 現在のサッカーは樋口監督の意向よりも、選手たちが志すスタイルを具現化した形に過ぎない。そのため『退任発表直後のナイスゲーム』という捉え方は間違いで、ただ選手の総和で相手を上回った結果でしかない。残念ながら、しびれるような緊張感のあるゲームを競り勝った効果は得られない。ただ、それでもチームとして戦って勝利をつかみ取った選手たちはプロとして称賛されるべきだろう。

勝ったことでどれだけの笑顔がこぼれたのか。チームと、練習風景と、そしてクラブハウスに、どこか虚無感が漂う時期である。注目の監督人事について嘉悦朗社長は「大事な局面なので具体的な名前に関してはコメントできない。時期的に考えても、さぁこれからどうしよう、という段階ではない」と話すにとどまった。もちろんゴールは近いのだろうが、具体的な人選についてはいまだベールに包まれたままだ。

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