「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

勝ち点1は最低限の報酬 [1st5節仙台戦レビュー] (藤井雅彦) -1,495文字-

中澤佑二の試合総括が、このゲームの意味を端的に示している。

「負けなくて良かったけど、引き分けで良しとしてはいけない試合」

4-3-2-1_2015 前半の「負けなくて良かった」と言う言葉は、試合展開による部分が大きい。内容はともかくとして、後半途中に先制点を許してしまった。そうするとベガルタ仙台の守備ブロックを崩すのは容易ではなく、どう見ても敗色濃厚だった。それを最後の最後に伏兵・ファビオの一撃によって勝ち点1を拾ったわけだ。

逆に後半部分の「引き分けで良しとしてはいけない試合」の意味は、前半の内容が悪くなかったことを指しているのだろう。これについては同じCBの栗原勇蔵も「悪いゲームをしたとは思っていない」と話していた。

守備の中核二人がこうして話す理由は、攻守両面にある。ボールを支配しながら攻めつつ、カウンターへのリスク管理もしっかりできていた。前半、仙台のチャンスは12分にウイルソンが放ったバー直撃のミドルループくらいだろう。それにしても相手のカウンターに対して守備の枚は足りており、ブラジル人ストライカーのシュートテクニックに驚かされただけだ。

 

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兵藤慎剛は「早いうちに試合を決めたかった」と悔しがる。つまり流れが悪くない前半のうちに得点し、有利な展開に持ち込みたかった。実際にそうできるチャンスがなかったわけでもない。早い時間帯にアデミウソンは二度のチャンスを迎えていた。だが、いずれの場面もシュートを選択しなかった。プレーヤーとしての資質の高さは明らかなだけに、あとはチームが求める仕事をどれだけできるか。いま求められている仕事は、間違いなくゴールだ。

仙台4-4-2 2列目以降の得点力という点で、マリノスはどうしても脆弱と言わざるをえない。齋藤学は致命的に得点能力が低く、ゴールへの嗅覚が足りない。たとえばゴール前に入ってのワンタッチゴールや、こぼれ球をプッシュして抜け目なく得点する場面が見られない。これに関しては兵藤のほうが上だが、彼にしても中盤と前線の中継役をこなすことが先決だから、ゴール前に入る回数は限られてくる。

それから喜田拓也である。前節の柏レイソル戦に引き続き、攻撃性能の高さはこの仙台戦でもしっかり示した。チャンスに最も多く絡んだのは彼だろう。だが、試合を決めるだけの能力が現時点で備わっているかといえば、そうとはいえない。これに関しては未知数で、今後どこかのタイミングで成功体験を得られれば覚醒するかもしれないが、いまからアテにしてはいけない。

これまで何度も言っているように、攻撃は水物だ。相手の守備との相対要素や運に左右される部分も大きい。とはいえ勝つチームには優秀なゴールゲッターがいるものだ。いまのマリノスには、それが見当たらない。中村俊輔は全体練習に復帰し、ラフィーニャもリハビリのペースを上げて復帰へと近づいている。得点力不足解消には彼らの帰還を待つ以外にない。

もうしばらくは我慢の時間、辛坊のサッカーが続くだろう。そう考えると、この日の勝ち点1は最低限の報酬だったのかもしれない。負けずに次のステージに進むことをポジティブに捉えたい。

 

 

 

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