「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ラフィーニャ・喜田が離脱。誰が起用されても、ほとんどぶっつけ 本番に近い [2nd8節鳥栖戦プレビー] 藤井雅彦 -2,298文字-

 

好事魔多しとは言うが、今回ばかりは頭を抱えてしまった。このタイミングでの残酷なアクシデントによって、マリノスはチーム力を維持することができないのだから。

4-3-2-1_2015 名古屋グランパスとヴァンフォーレ甲府に対して2連勝し、ようやくチームの軸足が定まってきた矢先のアクシデントである。サガン鳥栖戦2日前の20日、攻撃陣と守備陣で分かれて練習を行っていた際、シュートを打ったラフィーニャが左太もも前に違和感を訴え、そのままクラブハウスに引き上げた。程度はともかく筋肉系の故障であることは間違いなく、またしても離脱となった。鳥栖戦のアウェイ遠征には帯同しない。

それだけではない。試合前日の21日に、喜田拓也の頭部にシュート性のボールが当たり、病院で検査を行った結果、『脳震とう』と診断された。負傷直後は通常よりも一人多い19人のメンバーでアウェイ遠征に向かう予定だったが、患部が頭だけにドクターストップがかかった。そのためラフィーニャ同様に喜田も遠征には帯同しない。バスにはいつも通りの18人が乗り込んだ。

ラフィーニャは2連勝の立役者だ。「アグレッシブさとパワーをもたらした」とエリク・モンバエルツ監督。ようやく復活し、攻撃の軸としてこれから本領発揮というタイミングで の再離脱は残念過ぎる。一方の喜田は右ひざ痛から復帰し、ボランチとして主に守備的な役割を担っていた。攻撃から守備に切り替わった瞬間のポジショニング やチェイシングのスピードが素晴らしく、目立たなかったが実効性の高いプレーを見せていた。

二人の再離脱によって、チーム作りはふりだしに戻ってしまった。なぜならば現状で代役のいない2選手だからである。

 

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ラフィーニャに代わって1トップに入るのは伊藤翔だろう。当初はアデミウソンを1トップに戻して藤本淳吾や天野純を右MFで起用する策も考えられたが、アデミウソンが右MFとして主に攻撃で力を発揮し、多くのポジションを入れ替えるのは得策ではないと決断した模様だ。伊藤はゴール前で力を発揮できる選手だが、ラフィーニャほどオールラウンドな能力は持っていない。ビルドアップにも貢献していたラフィーニャの役割を彼に求めるのは酷だ。

鳥栖4-2-3-1  喜田のポジションは前述したように守備的な役割で、実はこのポジションはいまのチームで最も手薄である。富澤清太郎がジェフユナイテッド千葉へ完全移籍 し、熊谷アンドリューは左足首を痛めて別メニュー調整中だ。兵藤慎剛も右ふくらはぎ痛を抱えて遠征メンバーに入っていない。残された選択肢は、実は意外と 少ない。

考えられるのは三門雄大をボランチに下げ、トップ下に攻撃的な選手を入れる一手。あるいはファビオを一列上げ、CBに栗原勇蔵を起用する策もある。しかし栗原の右足首も完全な状態ではなく、あまり現実的ではない。すると三門を下げる一手がリアルになってくるが、そもそも三門はトップ下でスイッチ役を担うキーマンなのである。ポジションを動かすのはいかがなものだろう。

予想フォーメーションでは中村俊輔をボランチに入れ、ほかの選手のポジションは動かさなかった。ただ、これは筆者の個人的な“予想”でしかなく、練習では 一度も試していない。喜田が負傷したのは前日練習の終盤で、その後にフォーメーション練習などは行っていないためだ。誰が起用されても、ほとんどぶっつけ 本番に近い。中村と中町公祐がボランチでコンビを組み、トップ下に三門を置く布陣はサンフレッチェ広島戦で採用したが、機能性は低かった。そのあたりをど う判断するか。しかし繰り返すが、選択肢は思いのほか少ない。

2連勝の流れは残念なアクシデントによって一度途切れてしまった。それほどまでにラフィーニャの存在感は絶大で、彼の存在一つで勝敗は大きく変わっていた。 チームの総合力を問われるといえば響きはいいが、おそらく苦しい戦いを強いられるだろう。ラフィーニャと喜田のプレーはできないのだから、まずは出場する 選手がひたむきに勝利を目指さなければ3連勝は実現できないだろう。そしてサッカーに付き物の何らかの幸運が必要かもしれない。

 

 

【この試合のキーマン】

FW 39 アデミウソン

 

 ラフィーニャの離脱をうけて1トップに戻ることも考えられたが、3試合連続となる右MFでの先発が濃厚だ。唯一、単独でボールが収まり、チーム全体を押し上げる有効手段として、存在意義はさらに高まるだろう。

 前節・甲府戦はラフィーニャとのコンビネーションを駆使し、二人だけで相手ゴールに迫る場面もあった。今節はそれができないため、孤立する場面が出てくるかもしれない。ポジションが近い三門雄大や伊藤翔と適度な距離感を保ち、あくまでコンビネーションで相手を崩したい。

 鳥栖の屈強な守備陣に苛立ってしまえば、それこそ相手の思う壺だ。努めて冷静にプレーすることで道は拓けるはず。突破口を作り出すのは右サイドにいる背番号39だ。

 

 

 

 

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