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「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

この流れを、最終節でサガン鳥栖に [藤井雅彦レビュー 札幌戦]

 

 

力の差を見せたことに価値がある

正直、記者席からは停滞しているように見える前半45分だった。マリノスはボールを持っている時間こそ長いものの、効果的なビルドアップができない。最たる原因はおそらく両CBにあり、効果的な縦パスが入らないためコンサドーレ札幌の守備組織はまったく崩れない。相手は[3-4-2-1]の布陣のまま両サイドにゆらゆらとスライドしていれば良い状況で、守るのは比較的容易だったのではないか。バイタルエリアにタイミング良く齋藤学や兵藤慎剛が入り込んだ場面でも、そこをスムーズに使えないから攻撃は単調なものに終始してしまった。

しかし、そんな状況でも中町公祐に言わせると、まずまずの手ごたえを感じていたという。

「前半から相手のプレッシャーをそんなに感じていなかった。縦は無理でも横にしっかりつなぐことはできていた。そういう展開で問題ないと思っていたし、シュンさん(中村)ともやりながらそう話していた」

このあたりの感性が中町の魅力である。試合の流れを肌で感じつつ、周囲とコミュニケーションを図ることができる。その相手がチームの軸である中村俊輔なのだから、チーム全体の共通理解にもなりやすい。中村は周囲に意思を伝えるのが決して上手な選手ではないが、中町を経由することでほかの選手も方向性を統一できるというわけだ。

かくしてピッチ上のプレーヤーたちは焦ることなく戦い、前半途中を過ぎた33分に幸運な形から先制に成功する。中村のFKからのこぼれ球を右サイドの栗原が中央へグラウンダーの速いボールを送り、齋藤がトリッキーなシュートで合わせた。狙い通りの形ではないだろうが、ゴール前だけ切り取ればチャンスはチャンスだ。「ああいうところで決められないとずるずる行ってしまう」(中村)という心配を杞憂に終わらせたのは、これまでのゲームで決定機を外し続けてきた背番号11だった。

復活した齋藤は後半開始早々にも観客を沸かせる。右サイドでボールを持つと、左からバイタルエリアに侵入してきた兵藤とのワンツーから左足を一閃。シュートはゴール右隅へ決まり、スコアを2-0とした。このシーンが象徴するように、後半は札幌のバイタルエリアを完全に支配し、齋藤や兵藤、そして左太もも前の違和感を訴えたマルキーニョスに代わって入った小野裕二が目まぐるしく入れ替わって突き、札幌守備陣を混乱に陥れた。62分には兵藤から小野へ縦パスが入り、齋藤が3人目の動きからボールを受け、相手をかわして3点目を狙った。惜しくも決まらなかったが、理想的な攻撃にゴール裏のサポーターはさぞ沸いたことだろう。相手もフレッシュな状態の前半を我慢、あるいは辛抱し、後半にエネルギーを爆発させた格好だ。

相手がJ1最下位で、さらにJ2降格が決まっているチームであることを差し引かないわけにはいかない。個々の技量に小さくない差があり、それが11人の総和となればさらに大きくなる。サッカーは相対的なスポーツだ。あれだけバイタルエリアでパス交換ができた試合は過去に思い当たらず、齋藤のフィニッシュにしてもこれまで何試合入らなかったことか。相手DFが最後までしっかり対応し、体を寄せてきているからシュートがコースを外れるわけであって、齋藤自身が抱える技術的な問題だけではないのだ。

ただ、それでも実力で見劣りする札幌を相手に、しっかり力の差を見せたことに価値がある。相手にお付き合いするのではなく、前線の個をベースに違いを見せてくれた。この流れを、最終節でサガン鳥栖にぶつけようではないか。相手は浦和レッズや名古屋グランパスよりも上の3位に君臨している。積み上げてきたチーム力を発揮するのに、相手に不足なしである。

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