「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

誇り高き右SB、小林祐三がどのような思いでこのタイミングでの発表を選んだか [2nd17節 浦和戦プレビュー]

 

あっという間に2016年のリーグ最終戦を迎えた。対戦相手は年間勝ち点で首位を走る浦和レッズ。舞台はすでにチケットがソールドアウトしている埼玉スタジアムだ。スタンドが真っ赤に染まることは想像に難くない。こんな言い方は申し訳ないが、マリノスサポーターは端に追いやられてしまうかもしれない。だが、その声援は必ずやピッチ上の選手の背中を押す。

「目の前で相手が喜ぶ姿は見たくない」

 そう言って語気を強めたのはボランチの喜田拓也だ。飛躍のシーズンとなった昨季に続き、今季もさらにスケールアップした感がある。何より、チームにロイヤリティと責任感が彼を突き動かしているように見える。単純にガムシャラなプレーに走っているわけではない。チームの勝利のため、クラブの前進のために汗をかいている。

前節のサガン鳥栖戦で自身初の二桁得点に乗せた齋藤学。最近はピッチ内外で若手や後輩を意識した言動が目立つ。先陣を切って動き出すことで、その背中を見せているのだ。もちろんピッチ内における最重要人物であることは、あらためて言うまでもないだろう。マリノスが浦和に勝利するためには、齋藤の活躍が必要不可欠だ。欲を言えば、この試合で2アシストして10ゴール10アシストを達成してほしい。

中盤の一角を担う兵藤慎剛にとっては苦しいシーズンだったはず。先発出場はこの浦和戦でようやく8試合目。それでも2ndステージ半ばのベガルタ仙台戦、アルビレックス新潟戦で記録よりも記憶に残る2試合連続ゴールを決めた。浦和戦では[4-1-4-1]のインサイドハーフを務め、周囲の若手と上手く協力関係を築けるか。その上で抜け目ない動きから浦和キラーぶりを発揮してもらいたい。

最後に、小林祐三である。今日発表されたように、契約満了に伴い来季の契約を更新しないことが発表された。2011年に柏レイソルから移籍加入した小林はマリノスの一員として6シーズン戦い、リーグ戦においては明日の試合がラストゲームになる。また、この試合が節目となるJ1通算300試合の舞台だったことから、本人の意思によって試合前日の公式リリースとなった。

 

 

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 試合前日というデリケートなシチュエーションでもあり、彼についての詳細原稿は後日あらためて記述する予定だ。ただ、あらかじめ筆者の簡単な見解だけ述べさせてもらうと、クラブと本人が喧嘩別れしたという事実はない。もちろん金銭面で過度なトラブルが起きたわけではなく、現時点で他クラブとの争奪戦が展開されたわけではない。あくまでもクラブが小林に対し、総合的に判断した結果の答えである。

しかし、それでも契約満了という事実に、違和感がまったくないわけではない。今季ここまで全33試合中32試合に先発し、3年連続フルタイム出場に王手をかけている中澤佑二に次ぐプレータイムを誇る選手だ。それどころか所属した6年間は常に右SBのレギュラーポジションを守ってきた。そのプレーヤーに対しての処遇判断という点で、ファンやサポーターが疑問を抱くのもある意味で当然であろう。ある種の批判的な声が飛んでも不思議ではない。

その上で、明日の浦和戦を注視したい。彼がどのような思いでこのタイミングでの発表を選んだか。誇り高き右SBの意を汲み、それに応えなければならない。まずは最後まで小林祐三の背中を後押しすべきだ。そして試合後、本人の口からどんな言葉が語られるのか。思いの詰まった90分を見届けようではないか。

 

 

※前節レビューは筆者都合によりお休みさせていただきました。申し訳ありませんがご了承ください。

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