勝ち点3を積み上げながら、少しずつチームは前進している [J16節 神戸戦レビュー]
素晴らしい先制ゴールだった。シーズンが終わったとき、ゴール集の上位に位置するのは間違いない。
扇原貴宏から中央に入り込んだマルティノスに縦パスが入る。それと同時に左サイドのスペースを山中亮輔が駆け上がる。マルティノスは相手を引きつけてからスペースへボールを出して、左SBの推進力を引き出した。山中の冷静なマイナスクロスも秀逸だったが、見逃せないのは相手エリア内に4選手入っていたこと。1トップのウーゴ・ヴィエイラはファーサイドに逃げ、逆サイドから齋藤学がニアへ突進。その後ろから中町公祐が入り込み、マルティノスも遅れてエリア内へ。これだけ厚みのある攻撃ができていれば、ゴールが生まれるのは必然だろう。
ただ、先制後の試合運びには少なからず課題を残した。気がつけば年長選手としてチームを引き締める立場となった飯倉大樹が言う。
「2点目をもっと早い時間帯に取れていれば、もう少し余裕のある試合運びができたと思う」
先制後はチャンスを量産していただけに、欲を言えば早く追加点がほしかった。守備で危険な場面は皆無に等しかったとはいえ、フイを突かれて失点することだってある。セットプレーでゴール前にボールを入れられれば、アクシデントから失点するかもしれない。そんなリスクは常に存在するのだから、良薬は追加点しかない。チャンスがないのならば我慢するしかないが、チャンスが存在するならば決めなければいけない。
チャンスを外し続けたウーゴ・ヴィエイラがようやく決めたのは85分。ベンチに富樫敬真が控えていたにもかかわらず交代させなかったエリク・モンバエルツ監督の胆力には頭が下がる。結果としてはストライカーが待望のゴールを決めて良かったのだろうが、勝負にシビアになるならば富樫の出場は遅かったようにも見えた。
何はともあれ、この追加点が重要である。1-0で勝ち切ることも素晴らしいのだが、チームとして進捗を求めたときに、追加点を奪って勝利を決定づける作業が欠かせない。「追加点を取って勝てたところに成長を感じる」(天野純)。勝ち点3を積み上げながら、少しずつチームは前進している。
マリノス以外の上位陣も勝っているため順位に変動はないが、連勝を伸ばして食らいついていけばいい。シーズン折り返しまで残すところ次節の大宮アルディージャ戦を残すのみ。勢いに乗ってアウェイの大宮戦も突破できるか。