「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

リードしている状況なのに精神面で優位に立っていなかった [J19節 清水戦レビュー]

 

前半だけを切り取るとマリノスのほぼ完勝である。17分、齋藤学とマルティノスの二人の関係による鋭利なカウンターアタックが炸裂。齋藤が絶妙なタイミングでボールを配球し、マルティノスがリーグ屈指のスプリント能力と華麗なシュートを決めた。最高の形で先制ゴールが生まれたわけである。

 セットプレーから同点ゴールを許したのは誤算だが、セットプレー守備に不安を抱えているのは以前から指摘しているとおり。いまのマリノスは単純に高さという要素が足りない。中澤佑二がチョン・テセをマークし、ミロシュ・デゲネクがカヌを担当。すると3番手の扇原貴宏は長谷川悠との競り合いで若干のミスマッチとなる。失点場面はマークミスというよりも、単純に負けたという表現が正しい。

それでもマリノスの攻撃は勢いを失うことなく、勝ち越しゴールを奪えた。齋藤を起点として山中亮輔が左サイドを駆け上がる。対峙した選手が間合いを詰め切れなかったおかげでゴール前を確認する余裕があった。ニアサイドに走り込んだ富樫敬真をおとりにつかったクロスは、その背後にいた天野純を正確にとらえる。天野はコンパクトに左足を振り抜き、ゴールネットが揺れる。

齋藤のPKが決まっていれば、おそらくワンサイドのゲームになっていただろう。相手側からすると、1点差と2点差では追う際の労力が大きく違う。前半終了間際という時間帯でもあり、清水エスパルスを土俵際まで追い詰められたはずのチャンスだ。しかし、ここまでノーゴールの齋藤はまたしてもゴールに嫌われた。六反勇治がストップした格好だが、齋藤が自滅したという見方のほうがおそらく正しい。

後半に入ってからもチャンスはあったが、一方でピンチも増えていった。齋藤は独力で切り裂いてシュートに持ち込んだが決めきれず、焦りが先行してボールロストする場面も目立った。ロストはすなわち清水の反撃を意味する。後半途中からは両ゴール前を行ったり来たりする攻守の入れ替わりの激しいゲームとなった。

 

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自慢の両ウイングの活躍によって主導権を握った。その一方で、後半に入ると両ウイングが精度の高いプレーを出せず、清水に反撃の機会を与えてしまった。特に齋藤に関しては、あとは決め切るだけだったという見方もできるが、決め切れていないからここまで無得点が続いている。「ウチが悪いときはサイドハーフの出来次第になるとき。今日の後半はまさにその典型だった」が中町公祐の見立てだ。

「相手ペースになったときにテンポを変えられなかった」と首を横に振ったのは飯倉大樹。扇原は「ボランチとしてゲームをコントロールできなかった責任を感じる」と唇を噛んだ。5連勝中は守備で主導権を握っていたが、この日に関しては相手にペースを握られ、主に攻撃陣が冷静に判断できなかった。リードしている状況なのに精神面で優位に立っていなかった。

前節のサンフレッチェ広島戦に続いてリードを守りきれず、またしても勝ち点2を失った。勝てる試合を確実に勝たない限り、上位との差は縮まらない。

 

 

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