「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

選手が入れ替わっても守備力を高く保てる、それがチームのスタイル [J22節鳥栖戦レビュー]

 

 

サガン鳥栖は元来フィジカルに優れ、マッシモ・フィッカデンティ監督は高い戦術眼を持っている指揮官だ。したがって試合前から難しいゲームになることは想像に難くなかった。

鳥栖はマリノスの長所を消し、短所を突いてくる。0-1で敗れたアウェイゲームがそうだったように、マリノスにとって非常に厄介な相手になると思われた。

 しかし試合が始まると、鳥栖とフィッカデンティ監督はマリノスをリスペクトし過ぎていたかもしれない。前回対戦のゴールシーンは、扇原貴宏が自陣で鎌田大地にボールを奪われて失点した。つまり鳥栖は高い位置からプレッシャーをかけていたわけだが、昨日の試合では反対に自陣のスペースを消すことを優先したように見えた。

11試合負けなし、8勝3分というチーム状態はこんなところでも効力を発揮したのかもしれない。あるいはイタリア人監督らしく、アウェイゲームでは慎重に戦う傾向があるのか。いずれにせよ鳥栖は齋藤学とマルティノスにスペースを与えない策を講じてきたが、それによってマリノスはビルドアップが簡単になった。前半、中澤佑二やミロシュ・デゲネクがボールをもってハーフウェーラインを越えるシーンがあったほどだ。

さらに開始9分に先制ゴールが生まれたことで、マリノスはさらに優位性を保った。山中亮輔の強烈な左足は「あまり感触はよくなかった」ようだが、ファーサイドを狙うことでこぼれ球が生まれるのはサッカーの常である。そこにしっかり詰めていたウーゴ・ヴィエイラはストライカーらしい嗅覚を発揮した。

 

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 先制してからはピンチもあったが、耐久力の高さはチームとして培ってきた伝統でもある。中澤佑二や飯倉大樹の貢献度が高いだけでなく、新加入の松原健や山中亮輔、あるいはボランチの扇原貴宏も守備からスタートする戦い方に馴染んでいる。選手が入れ替わっても守備力を高く保てる、それがチームのスタイルと言えるだろう。

この試合は3連戦の最後であり、中位グループとの3連戦のスタートでもあった。8月の鳥栖、ヴィッセル神戸、FC東京との3試合をいかにして勝っていくか。ここで取りこぼしているようでは上が見えてこない。中澤佑二は「まだ上位陣と対戦していない。連勝できたことは優勝争いする上で大きいけど、これからマリノスの真価が問われるゲームになっていく」と気を引き締め直した。

9月には川崎フロンターレや柏レイソル、あるいはガンバ大阪といった順位と地力が上のチームとの対戦が控えている。もちろん、その後には鹿島アントラーズやセレッソ大阪とも対戦する。順位が下位の相手からしっかり勝ち点3をもぎ取ることで自力と自信を増し、上位との対戦に備えたい。そういった点で中位の鳥栖を相手に、1-0ながら勝てたことには価値がある。

 

 

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