「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

3連勝を飾ることに価値がある 【J第3節磐田戦 試合直前・藤井雅彦プレビュー】

【予想フォーメーション】

実に好調である。開幕から2連勝で合計9得点。これ以上の数字は望むべくもない。『対戦相手』というエクスキューズを無視するわけにはいかないが、昨シーズンは開幕から7試合未勝利のチームである。担当記者としても安堵しているのが本音だ。

それは選手も同じことで「去年の最初はまったく勝てなかったから、どんな内容でも形でも勝つのは大きい」といまや不動のレギュラーとなった中町公祐が笑みをこぼす。練習中の雰囲気もとても明るく、自然と前向きな声が聴こえてくる。シュート練習において兵藤慎剛はゴールが決まるたびに「ナイッシュー!!」とはにかみ、比嘉祐介にすっかり感化された中村俊輔は時折、派手なガッツポーズを見せる。中澤佑二は若手を大声でイジり、富澤清太郎はどの練習にも意欲的に取り組む。

そんな中、小椋祥平(左股関節周囲筋損傷で全治2~3週間の見込み)と飯倉大樹(左股関節痛)の負傷離脱が非常に残念だが、いずれも長期離脱にはならない模様だ。彼らには、いつかチームが苦しくなったときの支えになってもらうために、いまは力を温存してもらうことにしよう。レギュラーと遜色ない実力を持つ両者の力が必要なときは、必ずやって来る。

チーム順位はもちろん1位だ。しかしながら、14日に発表された日本代表に選出されたのは栗原勇蔵ただ一人。「強いチームから選ばれるべきだと思う」という樋口靖洋監督の言葉は決して現状に対する不満ではなく、あくまで願望である。ある程度の試合数を消化しても順位が最上位ならば、今季のマリノスの強さはホンモノだと証明される。そのとき、栗原だけでなく数人が日本代表に名を連ねるのが理想。そういった展開を寂しがりやの栗原は「遠征も一人じゃなくてみんなで行けば楽しい」と彼らしい言い回しで熱望した。

以前も述べたが、首位ならばメディアの扱いはおのずと大きくなる。注目されれば、観客動員にも好影響を与えるだろう。すると結果的にクラブが潤う。やはりクラブが大きくなっていくのにチームの好調は欠かせない要素なのだ。だから1位を守り続けなければいけない。

そこでジュビロ磐田戦である。巷は前田遼一のジンクスで盛り上がっているに違いない。ここであらためて述べる必要もないだろうから割愛するが、それにしても「6年連続というのはなかなかすごい」(栗原)。もちろん前田に限らずゴールを許さないにこしたことはない。いまのマルキーニョス、そして中村俊輔のパフォーマンスを考えると、ゴールへの期待値は高めに設定してもいい。湘南ベルマーレ戦、清水エスパルス戦のように大量得点はなかったとしても、多彩な攻撃パターンで1得点であれば十分。齋藤学、藤田祥史といった交代の駒もそれぞれに特徴があり、指揮官の動き一つでギアチェンジが可能だ。

だから無失点で切り抜けることで勝機は近づく。注目の前田はここまでのゲームを観察するかぎり、好調とは言い難い。その理由は定かではないが、もともと万能型ゆえにマリノス戦ではあまり存在感を発揮しない。マリノスが失点するタイプの選手は何か突出した能力を持つタイプのストライカーが多く、それは開幕戦で2ゴールを許した湘南のキリノにも当てはまる。どんなプレーも高いレベルでこなす選手は、怖さという観点ではそれほどでもないのだ。

むしろ前田とコンビを組む金園英学は貪欲にゴールを狙ってくるタイプだ。荒削りな部分こそが最大の魅力で、ゴールへの執念が見える。中央から左サイドを主なプレーエリアにする山田大記とホットラインを形成しており、ゴール前でのマークを怠ると危険にさらされるだろう。ゴール前では中澤と栗原が前田&金園を監視するのは当然として、山田をフリーにすれば昨シーズンのアウェイ磐田戦で決められたシュートが脳裏をよぎる。

逆サイドに目を移しても「駒野のところが一つのポイント」と樋口監督。今季から3バックを採用している磐田において、駒野はウイングバックを務めて高い位置を取ってくる。マリノスとして対峙するのはドゥトラであり、その前方の兵藤となるが、このエリアで後手を踏むとチーム全体が押し込まれてしまう。とはいえ兵藤が守勢に回るとマルキーニョスが孤立する危険性は高まる。「うまく先手を奪えれば」と話しており、攻撃で主導権を握りたい。それができない場合、ドゥトラをサポートするために兵藤が下がらざるをえない。

清水とおなじように新しいシステムにチャレンジしているチームでも、完成度は決して低くない。前田を筆頭に個々の能力も高い。過去2戦ほど簡単なゲームにはならないはずだ。だからこそ、3連勝を飾ることに価値がある。

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