石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事/開幕したEURO2016でも審判にはミスがある】フランス×ルーマニア ヴィクトル・カサイ審判批評

フェアな立ち上がりの中での5分、ボールに体を入れる接触があったが“体を入れれば接触が起こる”とし、カッサイ主審はノーファウルとした。6分の空中戦での競り合いも激しかったが、ボールにプレーできているとする。神経質に接触を見極めるのではなく、「不用意かどうか」「影響しているか」をジャッジしていく。その証拠に、背中への不用意なチャージはしっかりとる。一方で、23分のエブラのチャージのように、腕が出ていても、がしっかりとボールにプレーできていればノーファウルとする。さらに、懲戒罰で選手にメッセージも伝える。32分、アフターでアキレス腱にチャレンジする格好になったキリケシュに、ドバンテージ後にしっかりと警告を掲出

もちろん、ミスもあるのが審判員である。36分のボールアウトはフランスのCKにすべきだったし、37分のアンドーレが倒れたシーンは、主審からは串刺しの位置だった。とは言え、コシェルニの足は当たってはいたが、振り抜いた訳ではないので、不用意としなかったのだろう。その見極めは議論できるが、ミスジャッジまではいかない。ある意味でカサイ主審らしい。45分、足裏は見せていなかったが、前蹴りのような格好になったラトに警告。後半に入ってからも基準は貫徹されており、53分もフィフティのためノーファウルとする。

57分のジルーのゴールも、GKタタルシャヌはファウルをアピールしたが、ボールはフィフティであり、競り合いには接触はつきものである。もちろん、その接触が、遅れていたり、不用意だったらファウルになるのだが、ジルーの腕は不用意ではなかった。J110節の名古屋グランパス×横浜Fマリノス戦での、川又堅碁のGK飯倉大樹に対する競り合いと同様である。

そして、64分。PA内でこぼれたボールに、スタンチュが反応する。フランスもエブラとカンテで挟むと、スタンチュが倒れる。テレビ画面の位置からは接触が見えず、主審側からも串刺しだった。カッサイ主審はワンテンポ遅れて笛を吹く。おそらく副審か追加副審マターの判定で、ゆえに笛がワンテンポ遅れた。リプレイを見ると、エブラが引っかけてしまっており、チームでのナイスジャッジとなった。67分のジルーが倒れたシーンのノーファウルもベストなポジションで基準通り見極めた。68分には競り合い時、ジルーがプレーできる範囲外から腕を広げて競る格好になったため警告。72分のエブラが倒れたシーンをノーファウルとしたのもカッサイ主審らしい。2016J1 1st9節の大宮アルディージャ×鹿島アントラーズ戦の木村博之主審のようなジャッジで、Jリーグでは大ブーイングとなりそうだ。78分にはパイエを押し倒したポパに警告を与え、開幕戦をしっかりと締め、基準を示した。カサイ主審の微妙な判定も含め、試合中は選手たちが受け入れようとしていたのも印象的だった。

 

 

~採点基準~

5:彼なしに試合はありえなかった

4:普通に試合を終わらせた

3:ミスにも見えるシーンがあったが、試合に影響はなかった

2:カード・得点に対する受け入れられない微妙な判定があった

1:ミスから試合に影響を与えてしまった

0:試合を壊してしまった

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