メンバー固定化は指揮官だけの問題だったのか? なでしこジャパンの敗北と再生をめぐる対談<後篇>
前回に続き、リオデジャネイロ五輪予選敗退を受けて、ファン代表の石井和裕さん(右)、そして取材者代表の上野直彦さんによる総括対談をお届けする。後篇となる今回は、「宮間はなぜ悩みながらのプレーを強いられたのか?」「なでしこのメンバーはなぜ固定化されたのか?」「マスコミの『手のひら返し』をどう捉えるか?」などなど、前篇以上に刺激的なテーマに切り込んでいく。
もっとも「刺激的なテーマ」といっても、そこは四半世紀にわたり女子サッカーを見続けてきたご両人のこと。ただ問題点を指摘するだけではなく、建設的な提言も随所に語っていただいている。あらためて、このおふたりに対談をお願いして正解だったと思った次第だ。そんなわけで、なでしこジャパンの敗北と再生をめぐる対談、その後半戦をさっそくスタートさせることにしたい。(取材日:2016年3月16日@東京)
■すべてをひとりで抱え込んでしまった宮間
──再び、なでしこに話を戻しましょう。ロンドン五輪から1年後、Numberに掲載された上野さんの宮間あやインタビューですが、この時は「ドーハ20周年特集」ということもあって、ずいぶん読まれたみたいですね。
上野 ええ、おかげさまで反響も大きかったです。何人かの同業者からも「ここまで宮間の本音を読んだのは初めてだ」とツイートしてくれていました。そこでの印象的な彼女の言葉が「誰かが『辞めよう』って言ったら、みんなバラバラになっていた」というものだったんですね。それはロンドン五輪の決勝を見ていてずっと感じていました。
正直、リオ五輪予選はピッチ上での混乱以前に、彼女の中ではずっと葛藤を抱えながらのプレーが続いていたと思います。心ここにあらず、みたいな状態が初戦のオーストラリア戦から感じていました。アスリートとしても、女性としても最も尊敬している存在ですが、あやさんのあんな表情は初めて見ました。
──いずれ上野さんには、今回の予選での彼女の葛藤も含めて、ぜひとも宮間の本を書いていただきたいですね。
石井 それ、僕も読みたいな。
上野 確かに本の企画はあったんですけど、諸事情で立ち消えになってしまいましたね。いずれにせよ僕は、あんなに集中できていなくて、プレーの精度も低い宮間さんを初めて見ました。これは僕の勝手な想像ですが、死ぬほど悩んであの大会に臨んでいたはずで、今も悩み続けているような気がしています。
石井 ひとりで全部を抱えた状態で、自分が何をしなければならないのか、ずっと自問自答しているようなプレーをしていましたよね。でもって、そうした思いが周りの選手と共有できていなかった。連動性が見られなかったのも当然だったと思います。
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