「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【インタビュー】栃木SC 橋本大輔代表取締役社長インタビューSeries2前編 ~グリスタのホームゲームで変えたこと、変えようとしていること~ 「お客さんにとって何が一番盛り上がる雰囲気になるのか。それを優先順位の最上位にして実行していきたい」

栃木SCの聖地、グリスタの様相が変わりつつある。昨年オフに社長に就任した橋本大輔代表取締役社長が陣頭指揮をとるかたちでクラブ改革が少しずつ前へ進んでいる。今季、取材を続けるなかで14節FC琉球戦を前にクラブスタッフから「ホームゲームが少しずつ変わりますよ」との話を聞いていた。実際、グリスタのホームゲームは細部ではあるが、しかし大事なディテールにおいて姿を変えつつある。

クラブは今、何を変えることで前進しようとしているのか。橋本大輔代表取締役社長に話を聞いた。なお、橋本社長のインタビューは今後、クラブ改革の進捗を随時伺うべく、定期的に配信していく予定だ。

スタジアムマナーにも協力を促していく

 

――ホームゲームのホスピタリティなどを変える取り組みがすでに始まっています。14節FC琉球戦からホームゲームの細かい部分が変わると聞いたのですが、実際に変えたことと、変えるにあたってどの辺りに気を使いながら変えたのか、教えてもらえますか?(インタビューは7月9日)

「実は、一昨日のことですが、クラブハウスに選手はもちろん、全社員を集めて、3ヶ年のビジョンで今年取り組むべき事がシーズン半分を終えて、どこまで進んでいるのか、またそのことに対してどういった反応が地域からあるのか、ということを共有したんです。予定ではフロントスタッフだけで事務所で実施予定だったんですが、急遽選手たちと全員で共有した方が良いと思い、クラブハウスで実施しました。もちろんクラブとしてこういった試みは初めてです。

今回は急な話でもあったので、僕がパワーポイントを使って行いましたが、できるだけ早い段階で、事業の各担当者が選手の前に立って、自分たちが行っている事業の進捗をしっかり説明するという取り組みにしていきたいと思っています。そういうことの積み重ねで、スタッフは成長できるだろうし、活躍するのは選手だけではなく、クラブ運営においてスタッフが活躍できる場所を作っていきたいという狙いもあります。

今回の共有では選手達のゲームと深く関わりのあるスタジアムビジネスに関することを主に伝えました。まだまだ“スタジアムビジネス”というまでには至っていないのですが、目的としては以下の三つを掲げていると伝えました。
『勝敗に依存することなく、既存来場者の満足度をあげること』
『初めて来場した方にリピートしてもらう』
『ボランティアをしている方や関係者にやりがいを感じてもらって、どんどん仲間を増やす』
これらが目的としてあるので、今はそこに至るまでのプロセスだと思っている、ということを選手たちと共有しました。そのなかでも一番僕らが気を使ったところで言えば、グリスタの入り口からピッチが見えるまでの間を少しでも“非日常空間”として感じてもらおうということです。グリスタは階下に埋もれているので、ファン・サポーターの皆さんが視覚的にいかにワクワクできるかというところですね」

――グリスタはそびえ立っているわけではないから、スタジアムに来た! という感覚が最初にないと。ただ、ビジュアル的にはイベントスペースに選手たちの大きな弾幕が掲出されるようになりましたね。

「そうなんです。あれ、シーズン始まってまだ木々に葉がないような時に撮影した写真を元にいろいろと考えていたんですが、できあがった頃にはその手前の緑が生い茂っていて、ブリッジから全然みえなくなってしまったんですけどね(笑)。ただ、ここはグリスタのホームゲームだよ、というものをまず入口からの導線で作って、勝たせるための雰囲気づくりをしたかった。それと、ファン・サポーターのお出迎えは、今までは社長が挨拶をするというのが恒例だったんですけれど、僕としてはそれもいらないのかなと。僕が出迎えるよりも、トッキーやチアーズがそこにいた方が喜んでもらえる。日常的に生活していて彼らに会うことはないので」

――練習場にトッキーが時々いるとビックリしますからね。

「そうですよね。トッキーやチアーズの役割をもっと明確にして、非日常空間のなかのコンテンツという位置づけにして、笑顔でハイタッチをしたりする。でも、いろいろな意見もあったんですよ。写真を撮る人が出てきて立ち止まって渋滞してしまったらどうするのか? とか。まあでも、それもそういうことが起きたら考えようと。懸念をして新たなことができなくなるのは良くない、という意見も社員から出てきたんです。少しずつスタッフの意識も変わってきているとも言えると思いますが、むしろ社員が本来の力を発揮してきているということなのかなと。
それと同時に、トッキーやチアーズと僕も一緒に入場ゲートに立って、スタジアムのマナーを向上させるキャンペーンもやることにしました。『スタジアムマナーにご協力を』というタスキを作って、それを掲げるようにしています。僕がいる意味というのは、クラブがスタジアムを作ることへのメッセージをお客様に発信しようということ。たとえば、『ここでは声を出して応援してください』というようなものもやろうかという話はしています」

――マナー向上というのは、お客さんに対して訴える?

「そうです。応援をする際の野次が本当に酷い状況があります」

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