根性立て直し計画—一瞬の心の通い合い 1-[ビバノン循環湯 336] (松沢呉一) -3,494文字-
本文を読んでいただけるとわかるように、彼女とはその後会えておらず、この件を私が原稿にしたことを知らない。しかも、誰にも言わないと約束をした内容を書いているため、しばらく寝かせているうちに発表する機会をなくし、メルマガ読者限定のevernoteで初公開。すでに店もないし、時間も経ったのでもういいでしょう。今考えても、彼女はつくづく惜しい人材だったなあ。
写真は最近の歌舞伎町。
根性を叩き直してやる
長い人生、どうしたって失敗というのがある。私の場合、毎月のようにあるわけだが。
最近の失敗事例を紹介しよう。私が目をかけていたヘルス嬢の話だ。
よく行くヘルスの店頭に見たことのない写真がある。18歳のマリリンちゃん。印象的な顔立ちなので、この写真を見ていたとしたら気づかないはずがない。
「新人?」と店長に聞いた。
「ちょっと前からいたんですけど、なかなか出勤しないので、写真を出していなかったんですよ」
その日に出勤のコたちだけじゃなく、他の在籍者もパネルに出しておくと、お客さんが目にして、そのコの出勤日にまた来るため、たいていの店では写真を出しておくものだ。しかし、なかなか出ないのでは、出勤日を教えることもできず、「いないコの写真を出している」とかえって評判を落とす。
「ハーフっぽいね」
「実際にハーフらしいですよ」
あとで本人に聞いたところ、三か国の血が混じっているので、ハーフと言っていいのかどうかわからないが、ともあれ、そういう顔である。
「このコは、昼間は別のバイトをしていて、遊ぶ金がなくなると、うちに来る。休みの日になると、“今日の夜、友だちと遊ぶから、昼間だけ出てもいいですか”って当日になって電話してくるんですから、全然プロ意識がないんですよ。それでも、ちょうどあいている日だったら助かるし、うちとしても、このコは置いておきたいので、クビにはしないですけど、せっかくその時についたお客さんが気に入っても、次がわからないので、お客さんも待ってくれないんですよね。顔もスタイルも抜群にいいので、もっとちゃんと出勤してくれるとうちも助かるし、ナンバーワンだって狙えるのに、ホントにもったいないコです。今年高校を出たばかりの子どもだし、遊ぶ金以上に稼ぐ事情がないので、しょうがないとも思うんですけど、こういうコはどうしたらいいんですかね」
「ホストにはめればいいんじゃねえか」
チンピラらしい発言をしてみたが、もちろん、冗談である。
「絶対無理ですよ。遊ぶ相手には困らないでしょ。遊ぶ金と言っても、このコの場合は安い服を買って友だちと飲んだり食べたりするくらいだから、バイトでは足りない分が欲しいだけなんですよ。車が欲しいとか、学校に通いたいとかもなさそうだし」
センター街で遊んでいるようなタイプのコなのである。その程度で風俗で働くのが今の時代。
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