柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ねこあつめの家』 無料のゲームがどれだけ大ヒットしてようがファンがお金を払うわけじゃない・・・わかっていてもやめられない猫プロイテーション映画(柳下毅一郎)

公式サイトより

 

 

ねこあつめの家

監督 蔵方政俊
脚本 永森裕二
撮影 安田圭
音楽 ペイズリィ8
主題歌 竹村愛弓
出演 伊藤淳史、忽那汐里、戸田昌宏、大久保佳代子、大山うさぎ、田口トモロヲ、木村多江

 

 

faceえー、みなさんご存じ「超人気アプリが実写映画化!!」である。ひさびさの「おまえは何を言っているんだ」案件。原作はスマホのアプリ『ねこあつめ』。庭先にいろんなおもちゃを「せっち」しておくと猫が来て遊んでいくのをただ眺めているというゲーム。そもそも流行ったのはちょい前で、いまごろ映画にしてもみんな覚えてるの!? というのがひとつ。もひとつは毎回言ってるんだけど、無料のゲームがどれだけ大ヒットしてようが、そのファンがお金を払うわけじゃないってこと。だがわかってはいてもやめられないのが猫ならなんでもいいという猫プロイテーションの世界なのである。監督は『土佐の一本釣り』に引き続いての蔵方政俊。いや、この監督の作家性について考えている人間、映画界広しといえどもオレ以外いないと思うよ!

ところでこれ、本編終了後に田口トモロヲのナレーション『ねこあつめの家のねこたち』という短編映画がついているのだが(本編のよけいなドラマがないので、観客が見たかったのはこっちのような気がする)、そこによれば本作に出演しているのはいずれも有名猫タレント、猫スターであるらしく、『猫なんかよんでもこない』、『先生と迷い猫』、『世界から猫が消えたなら』などの有名タイトルにも出ている猫が総出演!なのである。ま、そういうわけで猫プロイテーションもいろいろきわまった2017年猫プロ大作の登場だ!

 

若くして処女作『ゆりかご』で新人賞を受賞した人気作家佐久本勝(伊藤淳史)だが現在絶賛スランプ中。編集者との打ち合わせ中に居眠りするくらい……てそれはスランプ云々とは違う別の病気のような気がするぞ! そんなわけで連載中の小説も絶賛低迷中。編集者からは

「じゃあゾンビにしましょうよゾンビ。最近はやってるし!」
「えー」
「嫌なんですか?」
「いやー、別にそう言ってるわけじゃ……」
「じゃあ決まりですね! 主人公ゾンビにしてください!」

 というわけで地味な大学生の恋愛小説が翌週からいきなりゾンビネタになることが決まってしまった! 自社の連載小説をも破壊しようとする乱暴すぎる編集者がいるのは「週刊近代」という雑誌なんだが、これどうやら小説誌のようで、週刊小説雑誌なんてものが存在するってどんな世界なのか。まあゲームの中の世界なのか。ちなみに落ち込んだ佐久本、家に帰ると原稿も書かず、ネットでエゴサーチしては落ち込んでいる。ちなみにこの部屋が間接照明のだだっ広い部屋に、家具としてあるのはソファーと大量の目覚まし時計が沈められた水槽(魚はいない)という作家というモノをなにやら完全に勘違いしているとしか思えないCMの部屋みたいなところで、冷蔵庫にはレッドブルしかないオシャレさ! だからまず机買えっての! いったいどこの世界にこんな「作家」がいるんだよ!

 

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