赤鯱新報

【赤鯱短信】守護神が力不足を感じた日々。楢崎正剛にとってのJ2リーグ。

名古屋グランパスにとって初めてのJ2リーグが42節の全日程を終了する。3位か4位での昇格プレーオフを戦うチームにはどこか“最終節”という感覚が薄い部分もあるが、とにもかくにもレギュラーシーズンは終わる。8ヵ月は長いようであっという間でもあり、しかし開幕の頃が遠い昔のように思えるほどの期間でもあった。チームを一から作りつつ、J1昇格を勝ち取らんとする日々の中で起用された選手は実に31人。その歩みが一筋縄ではいかなかったことは、こうした数字からでもすぐに読み取れるものだ。不動の存在、欠かせぬ主力といえば40試合出場の宮原和也やそれに次ぐ出場数を稼ぐ和泉竜司や田口泰士ぐらいで、本当に今季は試合ごとに様々な選手たちの顔を見た。

では、楢崎正剛はどうだったか。チーム6番目の29試合出場はもちろんGK陣では断トツの数字だが、喫した失点の多さやプレーに見える窮屈さはこれまでの比ではない。よく言えば非常にチャレンジングなシーズンだったかもしれないが、逆サイドから見れば非常に苦しい、悔しいシーズンでもあっただろう。この終盤戦では8試合連続ベンチスタート。これは楢崎のキャリアには、なかなかなかった“珍事”でもある。41歳の大ベテランは今、何を思うのか。

プレーオフとはエクストララウンドである。勝敗はこれから決まり、その結果はチームにとって、クラブにとって天国と地獄ほどの差があるインパクトを残す。名古屋にとっての初のJ2リーグとは何だったのか、それを楢崎に聞くのは今ではないか、そう思った。

コーヒーを片手に現れた楢崎は、大きな喉仏を揺らして一口飲むと、「喉元過ぎればあっという間ですよ」と冗談めかして話し始めた。楢崎にとってのJ2、そして楢崎の目を通した“J2の名古屋”とはどのようなものだったのか。

Q:カップ戦もなく、中断期もなく淡々と消化されていったシーズンでしたが、いかがでしたか。
「大変とまではいかないけど、工夫をしてやっていかないといけなかったですね。メンタル面も含め。ストレスに感じるところももちろんあるけど、仕方のない部分もあるし」

Q:例えば惰性になってしまわないようにというか、そういう部分もありましたか。
「惰性とまでは、言うほどならなかったですよ。逆にどこでうまく一息つくかというぐらいで。メリハリがなくて、常にこう……『メリハリ』の『メリ』と『ハリ』のどっちなのかわからないけど(笑)、常にどっちかの方ばかりで。『ハリ』の方かな?(笑)。『ハリ』の方に常にふれているようなシーズンで、だから『メリ』を自分でうまく入れないと辛いなって思っていました」

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