石井紘人のFootball Referee Journal

【無料/連載④種をまく指導者:坂本康博のN-S式トレーニング】2-1 順天堂大学「“大足”でチャレンジするからファウルが多くなる」

―試合を振り返って如何ですか?

 

「一年坊の(太田)賢吾と二年坊の(後藤)虹介のダブルボランチのところが、ちょっとバタバタしてしまった。もう少し落ち着いて繋いでも良かったんだけど、賢吾は一回戦で使っていないから、ハリキリ過ぎて(笑)」

 

―太田君と後藤君の存在は大事ですか?

 

「展開力というよりは、頑張れる二人だね。山田(貴文)を後ろで使って、もうちょっと展開できたら良かったんだけど、そうなると前がいなくなる。」

 

石井:去年のチームは守備が凄く落ち着いていて、僕は一回戦を取材できていなかったんですけど、今日の試合はちょっとドタバタしていたかなと。それは今日だけですか?

 

「うん、ずっとそうだね。これで失点している。」

 

石井:昨年と今年の中盤の底の安定感の差なんですかね?

 

「坂本修(佑)がバタバタするから。去年は池永(航:レノファ山口FC加入)がいて、修は前で(ストッパー的な)仕事をすれば良かった。今年は、(チャレンジ&カバーの)二つをしないといけない。パートナーが一年生だからね。その辺でバタバタしてしまう。それと、(澤上)竜二が孤立するから、横ですり抜けていってボールを貰える選手が出てきたら、もうちょっと楽に点が取れる。結局、ゴールはFKだもんね。」

 

石井:去年でいう伊佐(耕平:大分トリニータ加入)君的な、衛生的な動きが出来る選手がいればっていう。

 

「そうそう。」

 

石井:先生的には、本当は2トップがいいけど、現実的には竜二君をワントップにして、動かして、そこに飛び込んできて欲しいと。今日も、なかなか竜二君には、ボールが入らなかった。

 

「出てないですよね。」

 

石井:それは出す側の問題ですかね?

 

「僕はね、フォローだと思うんだよね。竜二に対して、ボールを預けた後の動き。竜二は、ひきつけているんだけど、そこの“受け”の問題。距離や角度で、近づいていったり、離れていったりとかするんだけど、それよりも良い角度に入れば、もっと展開できる。その構成をね。」

 

石井:試合にはどのように入ろうと?

 

「順天堂大学(順大)のことは見てないんですよ。いちおう、ビデオだけとりよせて、関東リーグの最終戦だけは見たんですけど。10番をなんで最初から使わないのかなと思ったけど、怪我をしていたのかな?10番がポイントかなと思ってたら、今日のスターティングメンバーにいなかったんで。27番がトップにいたんだけど、チームとしてちょっとミスが多いなと。今日みたいに蹴ってくるイメージはなかったんで、ならばこっちはもっと丁寧に繋ごうと指示出したんだけど、なかなか出来なくて。」

 

石井:去年はむしろ「繋ごう」よりも、「早く入れよう」でしたよね。

 

「そうそう。たとえば、伊佐に預けて、竜二が走っていくっていうのがあったでしょ?それが今年はなくて、竜二の一発に期待するサッカーになってしまっている。そうではなくて、竜二に対して、良い角度でフォローする。これを徹底できていない。」

 

石井:順大が10番を出して、二枚替えして、一気にギアを入れて、実際にリズムも生まれた。

 

「うちはボランチが不安定だから、最初から10番が出ていたら困ったね。」

 

石井:先生は延長を覚悟したのかなと思っていました。

 

「いや、延長したくなかった。ただ、けなす意味ではなくて、順大のセンターバックは大きいんだけど、体の使い方があまり上手くなかった。だから、こぼれ球からウチにチャンスはあると思っていた。」

 

石井:終盤の村上(昌謙)君のビッグセーブは大きかったですよね。

 

「アレをやってくれないとね。二年間、(N-S式トレーニングで)特訓してきたんだから(笑)」

 

―山口幸太君の評価は?

 

「この前の試合まで使ってないんですよ。無茶苦茶なファウルするし、集中力も切れる。リーグ戦も後半はほとんど使っていない。でも、練習風景を見ていて、やっと集中してきたので、今日は使いました。今までもサブメンバーには入れていたんだけど、竜二と変わってセンターフォワードに入れたり。元々はセンターフォワードだったんですよ。ただ、ウチはバックがいないので、もう一度集中させて、去年と同じディフェンスを思い出せと。」

 

―卒業後の進路という意味で気合いが入っているのかなと。

 

「本人はそう言っていますけど、客観的に見れば、Jのトップとの実力はまだまだ。大学には、自らの選手をJに売り込む方もいますけど、Jに行っても試合で使って貰えなければ意味がないですよ。人数合わせや怪我人要因では。サブメンバー、一番良いのは試合に出られることですけど、そういった待遇でないのに、背伸びしていっても仕方ない。それよりも、しっかりと勉強して、ウチの大学ならば教員になった方が将来のためになる。」

 

―去年のチームはタレントがいましたよね。

 

「いや、タレントがあったというより、大会中に彼らが育ったんです。」

 

―今年のチームとの違いというのは?

 

「やっぱり伊佐だね。今年は大分トリニータで15試合くらいは出たのかな。怪我をしていて、最近は出てないのかな。伊佐が、「竜二を活かしてやろう」という。身長175㎝しかないんですけど、ヘディング強いんです。竜二がヘディングや競りでスタミナをロスせず、ゴール前での仕事に集中できた。だからね、伊佐みたいな選手を作ろうとしているんだけど、なかなか作れない。竜二が競り合ってボールがこぼれるという繰り返しでは、竜二がゴール前で仕事が出来ない。アイツはどこのポジションでもやるんだけど、下りてきて頑張るような状況ではダメで、前に行かせないと。」

 

石井:“接触技術”っていう意味では、今年のチームはどうですか?

 

「悪くないんだけどね、試合の途中で、何も考えずに好き勝手競りにいったんで、今日はファウルが多くなった。やっぱり、“大足”でチャレンジし過ぎ。体と足をスッと寄せるディフェンスじゃないんですよね。足だけを伸ばしてガーンっていくから、簡単にかわされる。練習で修正しても、試合になると無我夢中になって忘れちゃう。一発勝負でボールめがけてチャレンジするのではなくて、体から寄せていって、“ここだ”っていうタイミングでチャレンジしないと。」

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