石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事】トーレスへの二枚の警告は妥当だったか?  

アトレティコ・マドリードのフェルナンド・トーレスへの懲戒罰が物議を醸している。

先日行われたチャンピオンズリーグ準々決勝1st legのアウェイでのバルセロナ戦。アトレティコ・マドリードはトーレスのゴールで先制するものの、そのトーレスが35分に退場処分となり、逆転負けを喫してしまう。この「ヒーローから悪役へ」の退場劇に、アトレティコ・マドリードの選手だけでなく、元レアル・マドリードのグティも不信感をあらわにしている。ジャッジへの批判的な声の多くは、「バルセロナは審判団に守られている」「カードは厳しすぎる」というものだ。

ということで、ディエゴ・シメオネ監督の「あなたたち(メディア)が判断することだ」という言葉通り、トーレスの退場をLaws of the gameを元に振り返ってみたい。

トーレスへの一枚目の警告は29分、ドリブルするネイマールに対して、ボールではなく、足を引っかけにいったため。二枚目は35分、ブスケツのトラップを狙ってアプローチに行くが、寸前でパスを出され、そのまま足にチャレンジしてしまったためだ。

どちらも【反スポーツ的行為(ラフプレー含む)】【直接フリーキックとなる7項目の反則を無謀に行う】での警告だろう。

ちなみに、【無謀なとは、競技者が、相手競技者が危険にさらされていることをまったく無視して、または結果的に危険となるプレーを行うことである】。

トーレスへの一枚目の警告は、あきらかに遅れており、足にいっている。接触の度合いも決して弱くはない。通常のファウルの【不用意】を超えており、【無謀】での警告を出す主審がほとんどだと思う。

そして、そのジャッジは、この日のレフェリーの基準でもある。

となると、二枚目の警告もフェアな判定に見える。一枚目の警告同様に、アフター気味に足にチャレンジし、【結果的に危険となるプレー】となってしまった。トーレスに意図はなかったかもしれないが、Laws of the gameでは警告を出すしかない。

レフェリー側も、一枚、警告を受けている選手には、出来れば警告を与えたくない。レフェリーのコモンセンスである。だが、あきらかに警告となるファウルがあった以上、それを無視すると、“帳尻合わせ”のジャッジが頻発し、試合の主役がレフェリーのジャッジになってしまう。二枚目の警告を出したくないレフェリーも、カードを出さざるを得ないレベルだったのが、トーレスのファウルだった。

簡単に言うと、ボールではなく、足にチャレンジするものは、【無謀】と判断されることが多い。特にアフター気味となれば、【不用意】ではすませない。怪我に繋がる可能性があるからだ。

「バルセロナは審判団に守られている」のではなく、「すべてのサッカー選手が大きな怪我をしないようにLaws of the gameに守られている」のである。(全体の審判批評は後ほど)

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