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サッカーファンにも知って欲しい『FMくしろ』が挑んだロシアからの生中継(えのきどいちろう)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]六段目

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

 

3月13日夜、「FMくしろ広報局」のツイッターアカウントに異例の告知がアップされたのだ。それは「放送のお知らせ」ではなく、何と「挑戦のお知らせ」だった。

 

 

申し訳ない。今月はアイスホッケーのネタだ。サッカーパック全部盛りの読者には関心が薄いかも知れない。が、今月お伝えしたい最上のネタはこれだった。ビッグチャレンジのわりにほとんど知られていない。北海道の人口17万都市、釧路市の小さなコミュニティFM局が「ロシア出し生中継」に挑んだのだ。下調べもなく、一か八かのギャンブルだった。僕はあまりのいかれぽんちっぷりにしびれた。前代未聞の「ロシア出し」だ!

まず、なぜFMくしろがそこまで行きついたか説明が必要だろう。FMくしろは今はスマホアプリ「ListenRadio」(リスラジ)等でどこにいても聴けるようになったが、基本的には釧路市の地域住民に向けたコミュニティFM局だ。東京でいえば「かつしかFM」とか「調布エフエム」みたいな感じだ。間違っても「TOKYO-FM」や「J-WAVE」じゃない。小さくてマジメなコミュニティ局だ。番組も地域の生活情報が中心なのだが、唯一、趣きを異にするのはアイスホッケー番組を持ってることだった。

 

 

釧路は苫小牧と並ぶアイスホッケータウンなのだ。北海道は土地柄、ウインタースポーツが盛んで、冬季オリンピックに選手を輩出しているのだが、ことアイスホッケーなら苫小牧、釧路がビッグ2だ。トップリーグは「アジアリーグアイスホッケー」、日韓露3カ国のチームが混在するインターナショナルリーグである。その国内4チームの大半の選手が苫小牧か釧路の出身者なのだ。。釧路市の小学校では冬場、PTAの協力で校庭に水を撒き「学校リンク」をつくる。ウソのようだが水を撒くとひと晩で凍ってアイスリンクができてしまうのだ。

だもんで市民のアイスホッケー熱、競技理解がハンパない。一般のおじさんに競技経験者がものすごく多い。どうかすると今も草ホッケー(ビールを飲みながら楽しむ「ビアリーグ」とカナダ流の呼び名がついている)の選手だったりする。今は時代が変わったが、かつては血の気の多いツッパリ生徒は無理矢理、教師からアイスホッケー部に入れられたという。

その氷都・釧路の頂点に「日本製紙クレインズ」が存在する。昭和24年創部の「十條製紙アイスホッケー部」を前身とする実業団チームだ。全日本選手権7度優勝、アジアリーグ4度優勝の強豪だ。その「日本製紙クレインズ」が昨年12月、突如今シーズンいっぱいでの廃部を発表した。紙需要の減少にともなう業績悪化が理由だった。道東の小さな街、釧路は揺れに揺れた。これまで応援番組や試合中継を組んできたFMくしろも例外じゃなかった。

たぶんサッカーファンの多くは「横浜フリューゲルス」を連想するだろう。今から20年ほど前、Jリーグを揺さぶった悲劇のチームは、最後、天皇杯決勝まで勝ち残り、涙の優勝を遂げたのだった。その原動力は「このメンバーと1試合でも長くサッカーを続けたい」「痛みを分かち存続署名に奔走してくれたサポーターに勝利を届けたい」「頑張る姿を見せることで万に一つ、チームを救ってくれるスポンサーが現れないとも限らない」というものだった。

まさにそれとまったく同じことが「日本製紙クレインズ」にも起きていた。アジアリーグ日程を4位で終えると、プレーオフ第1ラウンドでは宿敵・王子イーグルス(苫小牧)を破り、同セミファイナルではデミョンキラーホエールズ(韓国・仁川)との死闘を制す。特に初戦の4時間半(2試合分!)を超える大延長戦はリーグの最長試合レコードとして語り草になるだろう。

 

 

地元釧路も1戦ごとにヒートアップし、ファイナルのサハリン(ロシア、ユジノサハリンスク)第2戦では今季最多の3011人動員が実現した。会場の釧路アリーナの席数は2600であり、400人以上が立ち見だった。が、釧路ラウンドのファイナル1、2戦をクレインズは落としてしまう。全5戦の3勝先勝方式だから、あといっぺん負けたら「日本製紙クレインズ」というチームはなくなるのだ。もちろん選手らは敵地で巻き返し、3連勝して逆転優勝を目指している。と、このような状況だった。

FMくしろはここで勝負に出た。ファイナル1、2戦(釧路)中継の反響は大きかった。ここでやめるわけにいかない。最後の最後までFMくしろはクレインズとともにあろう。ロシアに乗り込んで中継を出そう。

 

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