J論プレミアム

ニューヒーローはJ2から出現する(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

週末はわくわくしながら味の素スタジアムへ。今年はどんなシーズンになるだろう。

 

ニューヒーローはJ2から出現する(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]七十五段目

 

■J2からの個人昇格が常識になりつつある

縦に蹴られたロングパス、体勢不利に見えた明本考浩が巧みにコントロールし、江坂任にボールを落とす。江坂のフィニッシュワークが鮮やかだった。右足のワンタッチで谷口彰悟を裏返し、すぐさま左足を鋭く振り抜いた。

81分、このゴールで2点差とした昨季の天皇杯覇者・浦和レッズが、Jリーグ王者である川崎フロンターレを撃破。今年最初のタイトル、FUJIFILM SUPER CUP 2022を制した。浦和の復権を予感させる勝利だ。

川崎の攻撃を封じてみせた浦和の守備強度の高さも印象的だったが、J2でキャリアをスタートさせた2トップが試合を決めたのは時代の流れを映しているように見えた。

江坂は2015年にザスパクサツ群馬で、明本は2020年に栃木SCでプロ生活を始めている。早くもチームの屋台骨を支える岩尾憲もまた、湘南ベルマーレ、水戸ホーリーホック、徳島ヴォルティスと渡り歩き、キャリアの大半をJ2で過ごしてきた選手だ。

あるJクラブのスカウトマンは言った。「現在、J1の外国籍選手枠は5人に拡大。基本的に選手を育成している余裕なんかないんですよ。この状況、日本人選手にとって悪いことばかりではなく、J2以下から上を狙う若い選手にとってはチャンスなんです」。

J1でちょこちょこ試合に絡んでいるより、J2でバリバリやったほうが評価を高められ、中心選手の責任を背負ってプレーすることでしか得られないものがある。近年顕著になっているこの傾向は、今後さらに加速していくだろう。

その意味で今季の最注目プレーヤーは、J3のロアッソ熊本、J2のモンテディオ山形で実績を残し、ついにJ1へステップアップした中原輝(セレッソ大阪)か。結局、大きく実った甘い果実を収穫するのはいつだって上のヤツら、みたいでつまらなく聞こえるかもしれないが、そんなことはない。

ミュージシャンでもフットボーラーでも人に披露することで成り立つ稼業には、そのときにしか醸せない味がある。たとえば、今季の明本が浦和でどれほど目覚ましい結果を出したとして、アカデミー時代を過ごした栃木に帰ってきて獅子奮迅の活躍を見せた2020シーズンと比べ、どちらのほうが価値があると決めつけられるものではない。そこには観戦者のスタンスの違いがあるだけだ。

2022シーズン、東京ヴェルディには例年になく5人もの大卒新人が加入する。国士舘大出身のDF谷口栄斗。明治大出身のMF稲見哲行、DF加藤蓮。日体大出身のFW河村慶人。法政大出身のDF宮本優。読者の皆さま、どうぞお見知りおきを。このなかから次代のヒーローが現れるかもしれない。

 

■Jリーグが困難ながらも対面取材にこだわる理由とは

2月12日、新たなシーズンの幕開けを告げるスーパー杯をテレビで観て、のんびり過ごしてきた僕もいよいよ始まるなあと気分が高まってきた。その数日前には、メディア関係者に向けて『2022 Jリーグメディアガイドおよび 新型コロナウイルス感染拡大防止のための特別運用ルール説明会』が開かれた。

 

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