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メイクが変えるアスリートのパフォーマンス アスリートビューティーアドバイザー 花田真寿美さん

「アスリートビューティー」という聴き慣れない単語が目に止まりました。今回はアスリートビューティーアドバイザーの花田真寿美さんにお話をうかがいました。花田さんは、AC長野パルセイロ・レディースのコミュニケーション研修の講師をされています。「アスリートビューティー」とは何なのでしょうか。アスリートとメイクの話をすると「女性らしさを必要以上に強調しているのではないか?」「性的な見せ方を助長するのではないか?」と見られることもあります。しかし、花田さんのお話に「自分らしく」と言う表現はありましたが「女性らしく」という表現は一度もありませんでした。それこそが「アスリートビューティー」という単語の持つ本質だったのではないかと思います。

花田さんが行うメイク研修では、参加されたアスリートが、まず「なりたい自分」を言語化します。そして、その後にメイクの技術を学びます。「なんとなくメイクをするよりも、なりたい自分に近づくためにメイクを取り入れてほしいです。」と花田さんは言います。

今回のインタビュー記事を書き上げて、その理由が少し解った気がします。

「角刈り女子」がミスユニバースを目指す

花田さんは高校時代にバトミントンの強豪校でプレー。そこで「覚悟があるならば髪を切れ」と言われた経験があります。女子バドミントン部は「髪型を角刈りにしなければならない」という伝統があったのです。髪を切った花田さんは、見た目がニキビだらけの「角刈り女子」に変わり、男子高校生とすれ違う時に「キモ」と言われるようになりました。

卒業後は、「角刈り女子」から解放され、おしゃれをしようと思いましたが、メイクのコツがわからない、肩幅が広いので着こなし方が掴めない……試行錯誤の中で自分磨きに挑戦しました。

そんなとき、モデルにスカウトされ転身。それまでコンプレックスだった175cmの身長を強みにすることができました。ミスユニバースという目標に出逢います。ミスユニバースは外見と内面の両方を磨くことが審査のコンセプトとなります。スキンケアに気をつけて美肌を手に入れ、メンタル面の改善をすると、花田さんは、あらゆる場面で能動的に行動できるようになりました。

「これを現役時代に知っておきたかった」と思った花田さんは、このときの思いやノウハウをアスリートビューティーアドバイザーの活動に活かしていきました。

—-アスリートビューティーをどのように理解すればよいでしょうか?

花田アスリートビューティーとは、トップアスリート、スポーツを楽しむ人が、粧い(よそおい)と内面の両方を磨くことで自分らしさを表現することです。

これまで、どのような取り組みをされてきましたか?

花田主にアスリートに対して、試合、表彰式、イベント出演、メディア対応時にメイクアップのサポートを行い、自信を持って表彰式やピッチに立っていただいています。メイクレッスンも行っています。講師としてセミナー会場に出向くこともあります。

アスリートビューティーで積極的な気持ちを生み出す

—WEリーグはプロリーグです。プロだからこそアスリートビューティーの必要性を感じるところはありますか?

花田プロだから、見られる意識が重要です。例えば、NBL・メルボルン・ユナイテッド(オーストラリア)で活躍している馬場雄大さんは、プロデビューして何が変わったかというと「見られる意識を持つようになった」と言っていました。これまでは好きでプレーしてきた。けれど、プロになったからには、ファン、スポンサーの支えがあってプレーできているという意識になったというのです。だからこそ、その人たちに喜んでもらいたい、かっこいいと思ってもらいたいという気持ちに変わったというのです。そのとき「身だしなみが大切だと思った」と言っていました。

アスリートビューティーの考え方は、例えば、リモートワークしている女性がミーティングや外出の際はメイクや装いを変えるということに近いでしょうか?

花田そうですね。自分をプレゼンテーションする意識です。すっぴんで外に出ると「あんまり人に会いたくないなー」と思ったり、ちょっと猫背になったり、積極的に振る舞えなくなります。でも、逆に美容院の後には「このまま帰るのがもったいない」と思って、どこかに行く予定を作ったり、誰かに会いに行ったりします。積極的な気持ちになります。アスリートビューティーでは、そういう気持ちが、アスリートの競技にも生きてくると思います。

アスリートの場合は、自分のプレーが積極的になるのですね。今のお話を聞くと納得できる話なのですが、一方で、女子アスリートのメイクに対して、男性から、とてもネガティブな反応をされる場合もいます。有名なところではスキージャンプの高梨沙羅選手へのバッシングがありました。あれは、どういうことなのでしょう?

花田小さい頃から活躍している選手は批判を浴びやすいと思います。ずっと応援してきた選手が変貌すると「変わってしまった」という声が出ます。批判をする男性は自分の胸の中に選手の無垢なイメージを抱き続けていている人が多いと思います。

それは、その男性が自分の中で抱いている選手像なので、本来は本人の生活とは関係がないことのはずですね。しかし、批判を受けるアスリートは対応にエネルギーを使わなければならなくなります。そういう批判への対応に苦心する可能性があっても、メイクをすることでプラスになることの方が大きいですか?

花田私は大きいと思っています。メイクによるパフォーマンスアップのエビデンスを出そうと思い、今、大学と一緒に研究を行っています。

一番のポイントは、アスリートのメンタルの変化なのでしょうか?

花田そうです。メイクをすることで自身や魅力を引き出すことを目的としています。

花田さんは、髪を切り「角刈り女子」となり、周囲から暴言を吐かれるようなこともあった生活から、モデル事務所に所属する生活になりました。ご自分のメンタルに変化は大きかったのでしょうか。

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