中野吉之伴フッスバルラボ

ドイツと日本のサッカー環境、考えの違いとは?「子どもたちが熱望しているのは『サッカーを楽しみたい!』という思いだ」

▼キチ「私も日本で社会人リーグでプレーしていたけど、1時間半はかかった」

アンディ「うーん、それは、大変だな。日本の人口は?」
キチ「ドイツより多いよ」
アンディ「だとすると、日本ではまだサッカーをしている人は少ないんだなぁ」
キチ「スポーツの中では多い方なんだけどね」
アンディ「他のスポーツは? バレーボール、卓球?」
キチ「もちろんクラブやチームはあるよ。でも、そうしたスポーツ団体に対する自治体や国からのサポートというのは…」
アンディ「まったくない?」

キチ「ないわけではない。投資もされている。時に巨額のお金も動く。でも、何というか複雑なんだ。『何のために』という部分がぼやけている。いずれにしても社会人となってまで競技サッカーをする、できる人はひと握りという考え方が一般的だろうね。

そうなると、サッカーをしている子たちも思いきりサッカーをできるのは高校、あるいは大学までだと信じている。だから信じられないくらい、多くの労力をそこに注ぐ。いや、注がなければならないという外的プレッシャーがある。例えば、ドイツだとU15チームの練習は週に2回だよね」

アンディ「日本だと練習場が離れている?」
キチ「そのパターンもあるけど、ここではその話じゃないんだ。部活動だと、学校のグラウンドで練習はできるからね。授業後に学校でトレーニングができる。私が言いたいのは、その練習頻度なんだ。週に4〜5回やるところが少なくない」

アンディ「なんだって? ほぼプロ選手みたいじゃないか?」
キチ「日本のスポーツはそうした傾向が強いんだ。練習頻度や試合頻度はヨーロッパのどこより多い。週に4〜5回トレーニング、そして、試合をする。練習時間も90分とかではない。3時間やるのも不思議ではない」

アンディ「それはでもやりすぎじゃないのか?」
キチ「でも、それが日本の現実なんだ。

『もっとうまくなるために』
『試合に勝つために』
『大会で優勝するために』
『プロになるために』… etc.

そう言いながら、みんながやっている。でも、どこまでプラスに働くのだろうか? うちのU15の子どもに『もっとハードに練習しないとだめだ』といって、週に4回練習をしたら? もちろんレベルは上がるだろう。ひょっとしたら一つ、あるいは二つ上のリーグレベルにはなれるかもしれない。ただ、それだけの時間と労力をサッカーに注いで、さらに学校での勉強があって、将来への研修や資格を取らなければならないとなったら、1〜2年後、どれだけの子どもがサッカーをやりたいと思い続けられるだろうか?」

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