中野吉之伴フッスバルラボ

トレーニング中の空気感、互いのやり取り、声掛けのタイミング、コーチと選手との距離感には様々なヒントが詰まっている

▼国際コーチ会議で行われたトレーニングのデモンストレーションを紹介したい。

 BDFLはYouTubeに無料でアップしており、ドイツ語だが、国際コーチ会議の様子の多くが「ITK」で検索すれば見ることが可能なので、興味のある人は探してみてほしい。

この動画ではRBライプツィヒ・U16監督であり、ユース・アカデミーのスポーツ部門チーフでもあるセバスチャン・ケーゲルがデモンストレーションを行っている。テーマは「ボール奪取後の素早い切り替えのための認知、決断」。トレーニング内のグループは同クラブのU16チームだ。

ブンデスリーガクラブのアカデミーではどんなトレーニングを行っているのか。どんな点に気をつけて、どのようにトレーニングしているのか。少し掘り下げていきたい。

▼トレーニング1
6人、6人、5人の3チームに分かれる。白と黄色の2つのボールを使ってパス回し。グリッド内を動きながら少ないタッチ数でパスを回す。その後、コーチが「白、オレンジ」と2つの色を指示する。最初が使用するボールの色、二つ目の色がボールを奪いに行くチームの色を示す。それ以外の2色のチームが最初に指定された色のボールを使ってまず6本パスをつなぎ、それからミニゴールを狙う。ボールを奪ったチームもミニゴールを狙う。攻撃アクションのチームがボールを奪われて取り返すのは一度だけ。指示された内容からそれぞれの選手は自分がすべきアクションを可能な限り速やかに認知してプレーしていく。

3回ほど試しでプレーさせた後、ケーゲルが選手らに問いかけ出す。

ケーゲル「コーチからの指示があった瞬間、それがスタートの合図だな。では、そこでどんな決断をしなければならないのか? まずは守備に入るときのことを聞こうか」

選手A「プレッシングをすぐに狙う」

ケーゲル「そうだな。そして、誰がプレスに行くかという判断をもつことだ。そのための判断基準は?」

 選手A「相手のファーストタッチがズレたかどうか」

ケーゲル「技術的、戦術的ミスを突くように仕掛けるべきだな。例えば、横パスやバックパスとなった時に追い込んでいく。それから?」

選手B「カバーの位置取りに気をつける」

 ケーゲル「そのためには、誰が最初に当たるかがはっきりしないとダメだな。誰が当たる?」

選手C「ボールに近い選手です」

ケーゲル「その通りだ。ボールに近い選手がいち早くスイッチを入れないといけない。それ以外に、どんな状況だとプレスに行く際に有利になる? それは相手が準備できていないときだ。ボールを持っている選手が何をすべきかまだ整理できていないときにプレスをかけることで相手のミスを誘発することができるし、一気にボールを奪いやすい展開に持ち込める。では、今度はボール保持するチームはどうしたらいいだろうか?」

選手D「ポジショニングをすぐに見つける」

ケーゲル「基本陣形をとることだな。必要なだけの深さと幅を取ってパスの出口を作っていく。ミヒ、君はどう考えた?」

選手E「まず、相手を引き付けるために近くの味方のパスを出しました」

ケーゲル「なるほど、具体的な考えだ。だが、それは必要不可欠なものだったか? そこを考えなければならない。そのやり方でうまくいったのだから君のプレーを認めるよ。でも、あえて相手のプレッシャーがかかっているエリアに無理にプレーをするべきではないことは言っておく」

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