中野吉之伴フッスバルラボ

どうしたらうまくいかないんだろうという視点を持つことの大切さ。そこから考察することで選手へのアプローチが見えてくる

▼ 指導者の指導者としての挑戦(2)

7月28日にクラブ主催の4チーム対抗大会を行った後、私が監督を務めるフライブルガーU13は4週間の夏休みをとった。改めて言うことでもないはずだが、夏休みに十分な休みを取るのは選手にとっても、親にとっても、そして私たち指導者にとっても欠かせない、大事以外なにものでもないことだ。私も国際コーチ会議に参加したり、家族と一緒の時間をたっぷり過ごしたりして、心身ともに十分なリフレッシュをすることができた。

次男とは近くの湖畔に泊りがけで出かける計画をし、長男とは2人で1泊の自転車旅行を実現。休むというのは表向きのことであっては足らないし、1日2日で私たちの疲労は簡単に取れるものではなかったりする。だから最低でも年に2回は自分の身体がちゃんとリセットされて、頭の奥から、心の底から元気が戻ってくる感覚を取り戻すことがやっぱり必要なんだ。この大切さは、ちゃんと休んで、楽しんで、満喫して、力がみなぎってくる感じを実感し、その効果を体験しないとわからないものなのだろうか。

戦術理解、システム論、トレーニング原則うんぬんを小難しく語る前に、自分たちの心身や頭の仕組みを知ることは大切だ。先日ドイツのミッテルライン州協会専任指導者ベレーナ・ハーゲドルンさんのお話をお届けしたが、その中でドイツのライセンスシステムに関する説明があった。

「B級ライセンス講習会(日本でのC級相当)では、140コマの参加が義務付けられています。ここでいう一コマは45分計算ですね。基礎講習、応用講習、その後は育成か成人かに分かれての講習、そして最後に試験が行われます」

基礎講習では基本スポーツ生理学、コンディション理論をメインテーマに学ぶことになります。フィジカルに関するトレーニングにおける注意点、負荷のかけ方、バランスのとり方をまず学ぶことが重要になります

「一つの練習の中でサッカーをしながら、フィジカルにも気を遣いながらオーガナイズを考えることが求められるわけです。スピード系のトレーニングをしたいのであれば、コンディションが整っているアップの後すぐに組むこむべきだし、その際にはどれだけの負荷で、どれだけの休憩時間を取ってという知識がなければ何も身につかない時間になってしまう。基礎持久力をテーマにするなら、そうした負荷高めのトレーニングのあとに、サーキットトレーニングのような形で組み込むべきという考え方がでてくるわけです。それに負荷値の高い集中的なトレーニングをした後だったら、十分な休憩が必要というのは必須な知識です。だからこそ、ライセンス講習会における最初のテーマとして、コンディションに関する話を取り入れるようにしています

私も指導現場でトレーニングを考える時、負荷設定と休憩のとり方はいつでもとても気を遣う。そうした点も考慮しながら、アシスタントコーチのマヌとはしっかりとディスカッションをして練習メニューやテーマを決めていく。マヌはすでにB級ライセンスを所得しているし、フライブルク大学でスポーツ学を専攻している。その辺りの知識もすでに持ち合わせているので、理解が速くて助かる。

指導者とは「なぜ?」という視点を常に持ち合わせてなければならない。なぜ最初にその練習をするのか。それをすることでどのような負荷がかかり、その結果どのような効果が期待できるのか。うまくいかないときはどのように修正し、どのような選択肢を持つべきなのか。あるいは、「なぜそれをやらないのか?」という視点も大切だ。

トレーニング理論からすれば、AのトレーニングのあとにBのトレーニングをするべきというのがあったとしても、意図的にBのトレーニングをしないという選択をすることだってできる。ただそれを直感や自分の気分だけで変更するのではなく、しないことで生じるプラスの副作用を考慮に入れていることを論理的に解釈していることが大事だ。

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