久保憲司のロック・エンサイクロペディア

このコロナ騒ぎが終わったら、70億人の人間が何をするかというと、パーティーするだけですよ。こんなに世界が同じ思いを共有していることなんかないですよね 『ザ・ストーン・ローゼズ』全曲解説(3)

前回(2)よりつづく

 

これで『ザ・ストーン・ローゼズ』全曲解説、完結篇です。今みんながコロナで一人孤独になっている時にまさにふさわしいアルバム解説となってしまいました。

このアルバムが出た時と今の僕たちは全く違う時代を生きていると思ってたんですけど、全く同じですね。このコロナ騒ぎが終わったら、一人一人にさせられている70億人の人間が何をするかというと、パーティーするだけですよ。すごいパーティーの時代が始まるような気がします。人間ってそれくらいしかやることないんですよね。あと仕事するか。仕事は隔離させられても出来るんですけど、パーティーは一人じゃ出来ないですもんね。コロナが終わったら世界中の人が自分のいきたい所に行って、ハグして、キスして、楽しく踊り明かすんでしょうね。

こんなに世界が同じ思いを共有していることなんかないですよね。世界大戦、冷戦の時は世界は二つに別れてましたけど、今、不思議なことに世界は一つなんです。あのプーチンだって、コロナに怯えてますよ。年寄りだから死ぬ確率高いですからね。笑っちゃいけないけど、なんか笑ってしまいます。「イキってコロナ視察を防護服なしでやったの大失敗だ」と2週間震えているんです。ワクチンを一番最初に開発するのロシアかもしれませんね。一番最初に人間を宇宙に飛ばした国ですからね。リーダーがやれと言えば、2週間でやっちゃうかもしれませんね。無理か。

 

それでは後編いきます。

 

7曲目 「(ソング・フォー・マイ)シュガー・スパン・シスター 」

AとDのコードによる、本当に普通のジャングリー・ギターから始まるナンバー。でもその音、リズムは今まで聴いたロックとは違っていた。それはザ・フー、ピストルズ、新しい所だとストロークスだろうか、それと同じ何か新しさを感じる。僕でも弾けるコードなのに、なぜこんなに違って聴こえるのだろう?僕には全く分からない。

僕はその謎をずうっと探しているのに結局死ぬまでそれを見つけられないのだろうか、唯一ある答えとしたら、これは新しい音楽なんだよ、これは新しい世界なんだよ、僕は君を変えてやるという意思なのではないだろうかと思うのです。

それが何なのかというとまたドラッグの話になってしまうが、エクスタシーという新しいドラッグだったのだなと考えてしまうのです。

海外のサイトを見ると、歌の中で

“15ポンド、いやそれ以上払った”

“シュガー・スパン・シスターの髪の毛はデス・ホワイト(ヘロイン)のよう”

と歌われるので、この歌はヘロインを買う歌だと言われているが、89年の頃、エクスタシーは実は25ポンドもしたのです。今のエクスタシーは3ポンドとか4ポンドで買えるそうで、今の若者にとってはエクスタシーが25ポンドもしたのか想像出来ないんだと思います。だから高級なドラッグ、ヘロインのことだろうと考えてしまうのです。

あの頃の失業保険は週1万円くらいで、その半分の値段もするドラッグを買っていいのかとみんな思っていたのです。

歌の中でもそう歌われています。

But my guts
Can’t take many more

俺の心が言うんだ
もうこれ以上払えないって

 

My hands are stuck
To my Jeans
And she knows she knows
What this must mean

俺の手はジーンズのポケットの中でお
金を握りしめてビビってる
彼女は俺がどんな気持ちなのか知っているのさ

 

あのイケイケのイアン・ブラウンがビビっているの分かって面白いですよね。“こんなドラッグに失業保険の半分以上のお金を使っていいのか、俺この後5日間どうやってご飯食うんだ。ずっと次の給付日まで俺、お金ないぞ”という根性なしの心の中をシュガー・スパン・シスターは見抜いているのです。

「あんた、早くこれやりなよ。そうしたら、全てが分かるから」と

そして、イアンは彼女から買った薬で、全てが分かるのです。

ビートルズがボブ・ディランから教えてもらったマリファナで何か閃いたように。ヒッピーがLSDやって、これで革命だ!と悟ったように、ストーン・ローゼズのメンバーたちは、これだ!、これは新しいビートルズだ、新しいLSDだ、新しいパンクだ。これできっと若者たちは目覚めるぞと。これがこの曲の誰でも弾けるAとDのギター・コードが全く違ったものに聴こえる答えなのです。

そして、本当に若者たちはウッドストックに何十万人も集まったように、ミレニアムに向かって、ベルリンのラブ・パレードに100万人、すべての小さなクラブで、ビッグ・レイブで新しい人生を見つけたのです。

 

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