久保憲司のロック・エンサイクロペディア

クラッシュ『ステイ・フリー』 ・・・「バカだろあいつ」て笑ってた。完全に気が狂ってますな。イギリスってこんなんばかりです。 でもミック・ジョーンズの気持ちなんかよく分かるでしょ

 

ポスト・パンク・バンドのワイヤーの名言「ロックじゃなければ何でもいい」じゃないですが、そんな言葉通りに作られたのがクラッシュのデビュー・アルバム白い暴動です。

バンドのメンバーたちはロックの定番とされるマイクのセッティングなどを拒否したのです。そんな無茶苦茶な中で作られたアルバムですが、“ドラムの音がちゃちいな、でもこういう音だからギターが冴えてロックに感じるだよな”と今は名盤の風格を感じさせてくれるから不思議です。逆に同じエンジニアで、ロックの王道を行くかのように作られたピストルズのアルバムの方が風格的に負けてしまっているかのように感じてしまうのです。ジョー・ストラマーがここまで未来を予想をしていたのかどうなのか気になるところですが、偶然なんでしょうね。

無理難題を突きつけれても、怒らずに形なるものに仕上げたのがエンジニアのビル・プライス。何十年も経ってそんな無理難題を突きつけたミック・ジョーンズ(ロックの定石じゃないものを押し付けたのはジョー・ストラマーだったと思うけど)の元でリヴァティーンズのエンジニアをまたするのはすごいロックの歴史を感じてしまうのは僕だけでしょうか。

傍若無人だった彼らが、三作目ロンドン・コーリングで自分らよりとんでもない奴が自分たちをプロデュースをすることになるとは思ってもいなかっただろうな。プロデューサーのガイ・スティーヴンスはメンバーが演奏している横で、「これがロックだ」とか叫びながら椅子を投げつけたりしていた。そういう緊張感がロックを生むと思ってたんでしょう。気が狂ってますね。偉いのはメンバーで「ノイズが入るだろ」と怒りもせず、苦笑いしながら録音を続けていたのです。好きなようにやったらいいやん、俺は気にしないという姿勢、まさにパンクなんですけど。でも凄いですよね。

そんな変なアルバムに挟まれ作られたのがセカンド『ギブ・ゼム・イナフ・ロープ』、邦題動乱(獣を野に放て)かっこいいタイトルですがなぜ“首くくるのに十分なロープを奴らにくれてやれ”が動乱になったのか分かんないですけど、暴動を超えるには動乱という言葉しかなかったんでしょうね。

ファースト・アルバムは変すぎて、アメリカではリリースされず、セカンド・アルバムがアメリカでの彼らのデビュー・アルバムとなったのです。カウボーイの死体とそれを見つめる中国の共産党員、そして裏ジャケはアメリカに攻め入るかのような共産党軍。ファースト・アルバムがアメリカでリリースされなかったのに、とっても挑発的なアルバムです。でも音の方はブルー・オイスター・カルトのサンディ・パールマンに頼んで、アメリカで売れそうな音に仕上げたのです。当時はこれを始めて聞いた時はこんなのパンクじゃないという声もたくさん聞こえてきたのです。確かに今思うとブルース・スプリングスティーンのようにも聞こえるし、でも力強いサウンドは他のクラッシュのアルバムより心に響きます。

そんな中でも異彩を放っているのがミック・ジョーンズの「スティ・フリー」です。泣きの曲、マニック・ストリート・プリーチャーズで言えば「モータサイクル・エンプティネス」(邦題「享楽都市の孤独」)のような曲です。クラッシュがこんなバラードをかけるのかという名曲です。どんなことを歌っているかというとミック・ジョーンズの生い立ちです。部屋でギターの練習をしてた頃の話、僕の対訳を読んでもらいながら、もう一度聞き直してください。絶対泣けます。これをちゃんと訳せている人がいないので、どういうことを歌っているのか分かっている人が少ないので、と思ってたら、今はみなさんちゃんと訳せてますね。みんな英語のレベルが上がっていってますね。でも結構この曲の1番のポイント理解してないと思うんですよね、そこを伝えたいです。みなさんに負けないもっと完璧な訳をやりますので、読んでやってください。映画のような歌詞なのです。

 

We met when were in school
お前と会ったのは学校で

Never took no shit from no one, we weren’t fools
誰も俺たちのこと相手にしてくれなかったよな、
でも俺たちはバカじゃなかった

The teacher says we’re only having fun
先生はお前ら適当にやってるだけだと言い

We piss on everyone In the classroom
俺たちは他の奴らはみんな間抜けだと思ってた

 

When we got throw out I left without much fuss
学校を退学になっても別に気にしなかったよな

On weekends we’d go dancing
週末はバスに乗って

Down Streatham on the bus
ストリーサムに踊りに行ったよな

You always made me laugh
お前はいつも俺を笑わかせてくれた

Got me in bad fights
そんで喧嘩にも巻き込んでくれたよな

Play me pool all night
一晩中ビリヤードをやって

Smokin’ menthol
メンソールのタバコを吸った

I practiced daily in my room
俺は自分の部屋でギターの練習を

You were down the crown planning your next move
お前はパブで泥棒に計画を立ててた

Go on nicking spree
スプレーをパクリに行って

Hit the wrong guy
警備員を殴って

Each of you get three years in Brixton
お前らは刑務所に3年間ぶち込まれることになった

 

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