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【THIS IS FOOTBALL】ストライカーに頼るのではなく利用する

崩してはいない。

ハイネルのフワリとした浮き球に反応したドウグラス・ヴィエイラの落としからの、レアンドロ・ペレイラのダイレクトシュート。彼の前にはシマオ・マテがいたし、守備ラインは揃っていた。実際、レアンドロのシュートはシマオ・マテに当たっている。だが、レアンドロの豪快かつ強烈なシュートは、J屈指の強さをほこるCBのブロックを吹き飛ばし、ゴールネットを揺らした。

これがストライカーの力というものだ。

組織で崩す。それがチームとしてトレーニングしていることだ。そのトレーニングどおりのプレーが出て、得点を生み出すことは気持ちいい。広島であれば、たとえば神戸戦や清水戦がそういう例にあたる。しかし、サイドのポケットをとって相手の守備陣を深く崩すという基本戦略は、シーズン終盤には研究されていた。仙台戦の前半も、サイドはとれているがクロスを弾き返せばいいという彼らの発想に、立ち上がりのドウグラス・ヴィエイラ→森島(空振り)→川辺(枠外)というシーン以外は、ゴールを陥れる予感は少なかった。ハイプレスで仙台を押し込み、ボールをずっと握っていても、仙台は割り切って中を固めていて、隙間がない。中央にクサビを打ってコンビネーションを使いたくても、スペースがない状況。後半はさらに深くえぐり、また中へのクサビも見られるようになったが、ビッグチャンスとまではいかなかった。

ところが、レアンドロ・ペレイラがゴール前にいることで、あっという間に二つの決定機が。柏好文のクロスにレアンドロがヘッド。森島司のクロスをレアンドロが落とし、柏が飛びこむ形。そして、レアンドロの「崩しきらない」シュートが生まれたのは、その後だ。

この事実を見ただけでも、レアンドロ・ペレイラというストライカーが傑物であることがわかる。ただ、こういう得点の仕方を指して「個人に頼っている」と言われる場合があるが、こと得点をとるという部分については、最後は個人の力だ。コンビネーションで崩しきって最後はドフリーの状況で得点をとるなんて、傑出した攻撃能力を待つ横浜FMでも、バルセロナやマンチェスター・シティであっても、1シーズンに何度もあるわけではない。

たとえばバルセロナ対マジョルカ戦で、ホームのバルセロナは5得点をとって圧勝した。だが、彼ららしいパスワークで相手を崩しきったと言えるのは、4点目のスアレスくらいで、それも最後は世界的ストライカーが魅せた、歴史に残るといっていいヒールシュートというファンタジーがあってこそ。ましてメッシのハットトリックは、彼でなければ決められないクオリティのものばかり。PA内でのゴールは1点だけで、それもメッシの前には少し遠かったとはいえDFは前にいた。それでも彼は驚異的なカーブシュートでファーサイドではなくニアサイドをぶち抜いた。PA外からの2得点も前にはDFがいたのだが、ボール半個分の隙間をつくってゴールをぶち抜いている。メッシは自分のことを「クリエイター」と自負していたが、もちろんその要素もあるのだが、彼の本質はマシーン。同じ場所、同じ状況であれば、ほぼ100%の確率でゴールを陥れる。かつて868本ものホームランを叩き込んだ史上最高のバッター・王貞治を彷彿とさせる節密さを持つ。

もしメッシやスアレスがいなかったら、バルセロナの栄華は存在するだろうか。リバプールにサラーがいなければ、果たして今の戦績はあるだろうか。

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