【広島0-1鹿島】林卓人/責任とモチベーション
おそらく、林卓人はこう言うだろう。
「あのシュートは止められた。全ては自分の責任です」
そういう男である。
「全てのシュートは止められる」
彼自身の言葉である。
「それはクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシでも?」
そういう質問にも即座に返す。
「もちろん」
彼が即座に返答したのも記憶している。
下田崇はかつて「シュート練習でも、一本もゴールを決めたくない」と語った。
「シモさんの言うとおり、僕もそう思っています」
すさまじいプライドである。
鹿島戦、林は凄みのあるパフォーマンスを見せ付けた。
2分、レオ・シルバのミドルを弾く。簡単なプレーではない。入ってもおかしくなかったシュートだ。
6分、犬飼智也がファン・アラーノを経由してPA近くで放ったシュート。枠外になったのは林の正しいポジションどりに影響を受けたことも一因である。
8分、右クロスからニアにエヴェラウドが飛び込んだきたシーンも、しっかりとキャッチ。
18分、コーナーキックからの流れから町田浩樹がフリーでヘッドを放った。至近距離であり反応も難しい局面だったが、林は左手で触りボールのコースをネットからバーへと変えた。
29分、エヴェラウドのバイシクルシュートも落ち着いてキャッチ。
30分には立て続けに放たれた2本のシュートを立て続けにキャッチし、チームを落ち着かせた。
もし、林のセーブがどこかで狂っていれば、鹿島戦は全く違った局面になっていたはずである。
さらに素晴らしいのは、その声だ。
「彼の声は非常によく響いていた。それはただ単に鼓舞だけでなく、頭の整理の仕方もしっかりアプローチしてくれていた」
城福浩監督はセーブよりもむしろ、このコーチングに対して称賛している。
戦術的な部分へのアプローチは選手個々に対してからチーム全体に響きわたり、今、何をするべきかを的確に指示。プレーでも、声でも、林はまぎれもなくチームを牽引していた。
そういう彼だからこそ、エヴェラウドのシュートは絶対に「止められた」と言うはずである。
林の口から「○○がミスした」とか、あるいは「戦術に問題が」とか、聞いたことがない。
GKがサッカーの勝敗に大きく影響し、だからこそやり甲斐と動じに責任を負っているポジションであることを
強く認識しているからだ。
「GKというポジションは楽しいのか、それとも苦しいのか」
そんな質問を投げかけたことがある。
「楽しい、という感覚は、ちょっとわからないかもしれないです。達成感、という感覚ですかね」
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