【SIGMACLUB 8月号】林卓人選手×福元美穂選手/二人の名GK、かく語りき
レジェンドとして数々の名場面を創造し、2015年の優勝に大きく貢献した林卓人。
なでしこJAPANの守護神としてワールドカップや五輪で活躍してきた福元美穂。
偉大なる二人のGKがサンフレッチェ広島の一員となった時から
絶対に実現したいと考えていた対談が、SIGAMCLUB 8月号でついに実現した。
互いにリスペクトしながら、GKとしての誇りを感じさせる二人の会話の楽しさに
あっという間に時間は過ぎた。
全文はぜひ現在発売中の本誌で読んで頂ければと思うが、
WEBの読者の皆さまにもその一部をご紹介したい。
ポジショニングに対する意識
……今回はGKのことをもっとよく知っていこうということで、林卓人選手・福元美穂選手、経験十分のお二人のGKに語り合っていただこうと思います。
林●お願いいたします。
福元●こちらこそ、お願いいたします。
……林選手は福元選手のことをご存知でしたか。
林●そうですね。アテネ五輪も多分、一緒に行っているから、アテネの宿舎とかで見たことがあるんじゃないですかね。
福元●すみません。アテネ五輪は行っていません(笑)。
林●行っていないか(笑)。バックアップですか(笑)。
福元●そうです、そうです。でも、アテネ五輪関連の合宿では、一緒になったと思います(笑)。
林●そうか。直前合宿ね。まあ、海堀(あゆみ元日本代表GK。現在は引退)とはよく一緒に自主トレとかしていたから。海堀と代表のことを話したことは、すごく覚えています。
……プレーを見たことは?
林●もちろん、あります。すごく基本がしっかりしているということと、コーチングの声が非常に通るなという印象ですね。プレー選択の判断が確実で、理にかなっている。計算されたというか、コーチングをうまく使いながら、自分のプレーしやすい状況にもっていって、うまく最終決断を自分でつくり上げている。そういうことに長けているGKだなという印象があります。
福元●林選手からそういう風に言ってもらえて、嬉しいです。
林●まあ、合っているかどうかは、自分の勝手な主観なので。
福元●はい(笑)。
……逆に福元さんは林選手のことはご存知でしたか。
福元●はい。
林●ホンマに(笑)?
福元●本当です。GKコーチの川島透さんから、林選手のお話を聞いていますし、Jリーグでのプレーも見させてもらっています。
林●川島さんは僕の高校の時のGKコーチですね。その後、女子の指導をされていたのを忘れていました(笑)。
福元●はい(笑)。
……福元選手から見て林選手のプレーの印象はいかがですか?
福元●自分が1番凄いなと思ったのが、昨年の活躍なんです。最初は大迫(敬介)くんが出ていたと思うんですが、途中から林選手が出るようになったじゃないですか(第17節柏戦以降)。そこから、自分も「林選手か大迫選手、いったいどっちが出るんだろう」とずっと気になっていて。そうしたら林選手がずっと試合に出続けて、スーパーセーブはもちろん、安定感抜群のプレーを見せていた。同年代の林選手が常にいい準備をして試合に臨んでいる、素晴らしいなとすごく思いました。
林●ありがとうございます、よく見ていただいていて(笑)。嬉しいです。
……女子のサッカーにおけるGKの存在やプレーは、林選手はどうとらえていますか?
林●まあ、基本的には女子も男子も、そこまで区別はないと思います。ただやっぱり、ゴールマウスの大きさが男女とも一緒なので、どうしても男子と女子とは身長差というか、体格の問題は出てくる。そういう中でポジションの選び方は、基本的には一緒だと思いますが、女子は上背が男子と比較してそんなに高くない。180㎝を超えてくるような選手は珍しいと思うんですね。
そうなると、特に前後のポジションどりは、男子より難しいのかもしれない。前へ出ようという決断をしても頭をこされることを考えると判断が難しい。でも最後の最後、決断を下す部分やその前の準備は逆に、すごく楽しいとは思いますね。
福元●本当に林選手の言うとおりですね。自分もポジショニングをすごく意識しています。自分は女子のGKの中でも身体も小さい(165㎝)し、ゴールマウスを守るエリアは他のGKと比べて狭いと思っています。だからなるべく、守備範囲を広げたいなと思ってDFの背後のケアだったり、PAのギリギリというか、手を使えるところは全部自分が行きたいと思っているんです。
だからこそ、細かいポジショニングにはすごく気を付けています。ボールを持っている人がどういう状況であるかにもよるんですが、上のボールへの対応を考えると男子と比べるとどうしてもゴールに近いポジションになってしまうかもしれないですけど、そこも含めてポジショニングは考えますね。
お互いに聞いてみたいこと
……プレーの面で、林選手に聞いてみたいことはありますか?
福元●ええっ(笑)。
林●ないよ。(福元選手は)経験あるから。
福元●いえいえ。でも今は、サッカーのスタイルが変わってきているじゃないですか。自分は実は、あまりビルドアップが得意ではないんですけど、今のGKはそこをすごく求められる。その辺をどう捉えていますか?
林●もちろん、チームによってのビルドアップの仕方があるから、そこの戦術理解が大切。ただ、まずは自分の基本レベルを上げていくことが、どんな戦術にも適応するためには必要だと思う。
今回のユーロ(欧州選手権)を見ていても、ゴールキックを大きく蹴るチームなんてほぼないし、全部つないでいく。そこは、これからずっと求められていくところなのかなと思います。ユーロでも、相手がどういう風に(守備を)はめてくるか、しっかりとわかっていてボールを動かしているところがあるよね。なので、監督がどういう戦術を駆使して、どういうビルドアップをするかということ。あとはまあ、感覚は練習で磨くしかないかな。
福元●そうですね。
林●最初は僕も広島に戻ってきたばかりの頃は(ビルドアップには)苦労はしたけど、でもタイミングをつかめれば、すごく楽しくなった。周りの動き出すタイミングとかに自分の判断がついていけた時はやっぱり面白い。判断の部分が1番、何才になっても、通用するかなと思います。
福元●そうですよね。うん。
林●逆に年齢を重ねるごとに、ビルドアップの部分は楽しく感じています。
福元●素晴らしいです。
林●いえいえ(笑)。
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