「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【この人を見よ!】vol.7 誰もが大輔を見る~FW18 高木大輔~(2016/05/26)

第13節のツエーゲン金沢戦、第14節の清水エスパルス戦と、2試合連続でゴールを叩き込んだ。今季、さらなる成長を期待される高木大輔が、いよいよ調子を上げてきた。華麗なテクニック? いや、そっちじゃない。相手を蹴散らすパワー? それも違うな。圧倒的にエネルギッシュでエモーショナルなプレーが、観る者の心を大きく揺さぶる。

■やはり大輔か

敵味方が入り乱れるゴール前、ボールを頭でねじ込んだ。誰だ。18番。やはり大輔か。確認する前からわかっていたような気がする。少年時代の彼を知る人は言ったものだ。「あいつはいつも大事なところで点を取ってくれた」。

J2第14節、清水エスパルス戦、東京ヴェルディは10試合ぶりの勝利を挙げた。清水に先制を許しながら、高木大、高木善朗のゴールで逆転勝ち。フル出場し、勝利のためにすべてを捧げた高木大は感極まった。双眼鏡の向こう、ドロドロのシャツで何度も顔をぬぐっている。走って、走って、走り抜いた人の素朴な美しさ。その姿がやけに胸に迫った。

「大輔、本当によく走りましたね。あいつとドウグラスが前線から追ってくれ、どれほど助かったか」とキャプテンの井林章は言う。勝利を手にし、溢れ出した感情については、「まだ早い。先があります」と冷静な考え。つくづく、さまざまな個のカラーが混在するのがチームスポーツの面白さだ。

僕は井林の指摘をそのとおりだと頷く一方、この日の高木大を余すことなく憶えておきたいと思った。心身ともにすべてを出し切り、次へと向かう。明日のことなど頭のどこにもなく、いまを最高値で駆け抜ける。限界をとうに超えながら、それでもなお力を振り絞る。そうすることでしか己の器を広げることはできない。それは高木大の歩みそのものではないか。

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