「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【マッチレポート】J2-32[H] カマタマーレ讃岐戦『6ポイントマッチを制す』(2016/09/19)

2016年9月18日(日)
J2第32節 東京ヴェルディ vs カマタマーレ讃岐
16:03キックオフ 味の素フィールド西が丘
[入場者数]3,347人 [天候]曇、弱風、気温27.0℃、湿度86%

東京V 3‐2 讃岐
前半:1‐1
後半:2‐1
[得点]
0‐1 木島徹也(21分)
1‐1 ドウグラス・ヴィエイラ(23分)
2‐1 高木善朗(67分)
2‐2 藤井航大(76分)
3‐2 ドウグラス・ヴィエイラ(84分)

●東京Vスターティングメンバー
GK31 鈴木椋大
DF19 大木暁
DF3   井林章
DF5   平智広
DF6   安在和樹
MF11 南秀仁
MF8   中後雅喜
MF9   アラン・ピニェイロ
MF32 二川孝広(64分 北脇)
MF10 高木善朗
FW17 ドウグラス・ヴィエイラ
(ベンチメンバー:GK1柴崎貴広。MF14澤井直人、20井上潮音、23田村直也、33渡辺皓太。FW18高木大輔、29北脇健慈)

監督 冨樫剛一

■いかにも対照的なふたり

味の素フィールド西が丘の正面玄関付近で、平智広に話を聞いていた。カマタマーレ讃岐戦、東京ヴェルディは3‐2で勝利。平は井林章とセンターバックのコンビを組み、最終ラインを支えた。

通りかかった讃岐の木島徹也が「へえ、こいつにインタビューねえ」と茶化しながら僕らの横を抜けていく。昨季までふたりはFC町田ゼルビアでチームメイトだった。兄の木島良輔はかつて東京ヴェルディに所属し、木島徹は東京Vのアカデミー育ちと縁はあったが、僕との間に面識はない。「育成年代時の能力は代表クラス。能力はね」とチーム関係者から聞いたことがあり、噂に違わずイノセントな空気を身にまとっている人だなあと思った。

しばらくすると、木島徹はまたやってきて、平にちゃちゃを入れていく。どうしても早く話し、旧交を温めたいようだった。この際、ついでに木島徹も一緒に話を聞いてやれと方針を切り替えた。後半、ふたりが絡むゲームのポイントとなるシーンがあったのだ。

1対1の同点で迎えた55分、讃岐のカウンターアタックが発動。東京Vは井林と平が残っており、讃岐は3人が攻撃に参加していた。前線の木島徹にボールが入り、平が下がりながら対応する。木島徹はドリブルのスピードを落とさず、いったん左に進路を取り、素早く右へと切り返した。平が苦しい態勢ながら一度は止めるが、ボールはまだ木島徹の足元。右足でシュートを打たれ、鈴木椋大のファインセーブで東京Vは難を逃れている。

「あそこは絶対に切り返してくると思った。止めたというより、ボールが足に当たっただけですけどね」

平は笑いながら振り返る。相手のくせを知っていたことで、振り切られることなくギリギリ足を残せたのだろう。

ボールを失ったはずが、こぼれ球が自分の目の前に。あのとき木島徹はゴールを確信したのではないか。

「どうっすかね。シュートのとき、そんな余裕はなかったなあ」

コツコツ努力するタイプの平と、天賦の才に恵まれる木島徹。いかにも対照的なふたりだが、それゆえ馬が合うのかもしれない。JFAが推奨するサッカー選手の正しい姿として、教科書に載るのは前者の平だ。でも、正しさなんてのは、この世のほんの一部でしかない。生きる道は人ぞれぞれである。大人は自分の生き方に責任を取る。それだけの話だ。

(残り 2114文字/全文: 3443文字)

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