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日本のスポーツ観戦ツアー20年史を振り返る 徳田仁(株式会社セリエ代表取締役)インタビュー

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(c)Tete_Utsunomiya

今号の徹マガは、株式会社セリエの代表取締役、徳田仁(とくだ・まさし)さんにお話をうかがう。ワールドカップを含む日本代表の海外遠征、あるいはヨーロッパのサッカー観戦によく出かける方であれば、セリエの名前をご存じの方も多いだろう。セリエは、サッカーをはじめとする海外でのスポーツ観戦ツアーを専門的に扱っている旅行代理店。日本が初のワールドカップ出場を目指した、97年のフランス大会最終予選を皮切りに、かれこれ20年近い実績を誇る。

今でこそ、日本代表の海外遠征で多くの日本サポーターが応援する光景は珍しくなくなった。9月8日にテヘランで開催されるアフガニスタン戦にも、それなりの数の日本サポーターが駆けつけている。だが、私が学生だった80年代には、海外でスポーツを観戦するという文化は(少なくとも私の周囲では)まだまだ珍しかったと記憶する。

わが国において「スポーツ観戦ツアー」というものが一定の市民権を得るようになったのは、三浦知良がセリエAに、そして野茂英雄がメジャーリーグに、それぞれ進出を果たした90年代半ば以降であろう。そして、96年のアトランタ五輪(日本がブラジルに勝利した『マイアミの奇跡』もあった)、97年の『Road to FRANCE』、そして98年のフランス大会と中田英寿のペルージャ移籍といったトピックスが続く中、気がつけば「現地で観戦する醍醐味」というものは、日本のサッカーファンの間でもすっかり共有されるようになった。

今回、お話を伺った徳田さんは、日本のスポーツ観戦ツアーの黎明期にセリアを立ち上げ、サッカーファンの夢や感動や思い出といったものを「旅行会社のプロデューサー」という立場からずっと見守り、支え続けてきた。徳田さんには、サポーターともジャーナリストとも異なる視点から、この20年の喜怒哀楽について語っていただいた。(取材日:2015年8月21日@東京)

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■ほとんどぶっつけのイラン遠征ツアー

――今日はよろしくお願いします。徳田さんとは、取材先の海外ではよくお会いするんですが、日本で顔を合わせるのは本当に久しぶりですね(笑)。最後にお会いしたのは、東アジアカップが行われた武漢でした。あのツアーはいかがでしたか?

徳田 (人数が)少なかったですね。個人で来ている人があんまりいなくて。最初の試合(女子の日本対北朝鮮)なんか、僕を含めて6人しかいなかったです。しかも途中から韓国のサポーターが僕らのブロックに入場してきて、彼らは倍の12人いましたからちょっとびっくりして。主催者も2日目からはブロックを分けてくれましたが。

――そうでしたか。ところで9月にイランで行われるアフガニスタン戦のツアーですが、お客さんは集まっています?

徳田 今のところ18人くらいですね。

――意外と少ないですね。まあ、テヘランまでの距離と相手との力の差を考えると、仕方がないですかねえ。すでに現地の視察は済ませているんですか?

徳田 今回は行ってないですね。僕自身、イランは2007年のACLで浦和レッズがセパハンと対戦した時以来です。

――じゃあ、ぶっつけですか?

徳田 ある意味ぶっつけですけど、まあ何となく事情はわかるし、現地の会社からも情報は来るので。イランでの試合って滅多にないんですけど、ウチと付き合いのある会社は日本語ができるスタッフがいるので、やりとりは楽ですね。

――私自身、テヘランはジーコが代表監督だった05年以来ですけど、10月13日にも現地でイランとの親善試合があるんですよね。10年もご無沙汰だったのに、今年は1カ月に二度も現地に行くことになるとは思わなかったです(苦笑)。ところで今回、セリエさんで組んだツアーは何泊ですか?

徳田 1泊の弾丸で行くパターンと、ペルセポリスなどの観光をオプションで付けたパターンと2種類に分かれますね。アフガニスタン戦があるのが、8日の16時55分じゃないですか。タイムテーブルとしては、昼食を摂ってから会場に行く感じですが、テヘラン自体は有名な観光スポットってほとんどないんですよ。だから観光をしたい人は、試合後に国内便に乗って世界遺産があるシラーズに飛ぶ感じです。弾丸の人は、そのまま夜の飛行機でお帰りいただくことになります。

――今回のツアーで不安視していることってあります?

徳田 国内線が不安ですね。向こうのチケットってEチケットじゃなくて、いまだにペラペラの紙を使っているんですよ。懐かしいでしょ(笑)。昔の日本もそうでしたけど、団体航空券だとボーディングパスに座席のシールが張ってあって、添乗員がその場で席割をしないといけない。僕は昔やっていましたからできましたけど、いきなりあれを渡されて戸惑う人は絶対にいると思いますね。

【編註】その後、現地入りした徳田さんによれば、「イランの国内線でもEチケットが導入されていました」とのこと。

――なるほど。それにしても今年の日本代表は、アウエーでの試合が続きますよね。9月にまずイランでのアフガニスタン戦があって、10月にオマーンでシリア戦とイランとの親善試合(@テヘラン)があって、さらに11月にはシンガポールとカンボジアでも試合があります。これらもすべてツアーが組まれているわけですね?

徳田 もちろんです。私も全部、同行します。ウチの常連のお客さんでも「全部行く」っていう人は結構いるんですよ。おそらく最終予選みたいに人数にはならないし、9月のイランは少ないですけど、10月と11月は20人から30人くらいの人数にはなるんじゃないですかね。

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