大分トリニータ気鋭の「頭脳」が語るJ1再開と展望(J論)

宇都宮徹壱ウェブマガジン

『WM外伝 徹マガの蹉跌を超えていけ!』 Vol.1 表現とビジネス  宇都宮徹壱氏へのインタビュー<前篇>text by 中村慎太郎

 月1の期間限定連載が始まる。その前に、当連載について編集長兼主筆として、序文めいたものを記しておきたい。

 早いもので、宇都宮徹壱ウェブマガジン(WM)がスタートして今年の7月で3年目になる。おかげさまで16年7月に荒波の中で出港したWMは、すべてが順風満帆というわけではないけれど、それでも素晴らしいスタッフと会員の皆さん、そしてタグマ!に支えられて今に至っている。

 そのタグマ!での配信は、前身の徹マガ(宇都宮徹壱公式メールマガジン)時代の15年8月から。実は現WMがスタートするまでの間に、11カ月の「のりしろ」があった。さらに言えば、その徹マガがスタートしたのは10年5月末。すなわち、ワールドカップ南アフリカ大会の直前であった。そこを起点とするなら、この個人メディアは晴れて3回目のワールドカップを迎えることになる。

 つまり、こういうことだ。「徹マガがなければ、今のWMはなかった」と。その事実は謙虚に受け止めているし、6年にわたるプロジェクトに関わっていただいたスタッフの皆さん、そして当時の徹マガをご愛読いただいた皆さん(さらには、その後継であるWMをご愛読いただいている皆さんにも)この場を借りて御礼申し上げたい。

 とはいえ「徹マガが成功した個人メディアだったか?」と問われれば、その答えは明らかにノーである。確かに、新しいビジネスと表現の場を構築したことは間違いない。が、しかし一方で、問題が少なからずあったのも事実。課金コンテンツのサービスを継続する上でのガバナンスの脆弱さは目に余るものがあったし、その終わり方もまた「6年も頑張ってきた結果がこれかよ!」と叫びたくなるくらいお粗末極まりないものであった(その結果、一緒に立ち上げた人間との信頼関係は、修復不能なまでに破綻して今に至っている)。

「なぜ徹マガは悲惨な終わり方をしてしまったのか」──これまで何度もこのような質問を受けたが、ごく一部の人間を除いて私はこの件について沈黙を貫いてきた。だが当WMが3年目を迎えるのを前に、沈黙を破ることにする。もっとも、今さら大人げない暴露話をするつもりはない。それに、私には私の見方や考え方が当然あるが、他のスタッフは違った見方や考え方をしている可能性は大いにあり得る。ならば、信頼できる書き手にきちんと取材をしてもらい、客観性に裏打ちされた作品として世に問うてもらおう。それが、私が下した結論である。

 今回、その書き手として中村慎太郎さんを選んだのは、3つの理由がある。誠実な書き手であること、徹マガ関係者に直接コンタクトがとれる立場にあること、そして誰にも忖度をしないこと。3番目の理由は特に重要だ。当連載について、私は中村さんに執筆依頼こそしているものの、彼の書いたものに対しては一切口出しすることはしないし、編集についてもノータッチ。本件に関しては、私は純然たる取材対象者であり、そしていち読者である。それゆえ「私への忖度は無用」と中村さんには念押ししておいた。

 それにしてもなぜ、過去の恥ずかしい失敗談を明らかにすることにしたのか、最後に説明しておきたい。今後、ますます書き手の発表の場が少なくなる中、その受け皿としての個人メディアはさらに増えていくことが予想される。ただしメディアとして成立させるには、書き手だけでなく編集者の存在が必須である。個人メディアは、書き手と編集者の両輪があって初めて回っていく。むしろ、それこそが一番の要諦であると言ってよい。

 徹マガの失敗はつまるところ、書き手と編集者の両輪が上手く機能しなかったところに尽きる。車軸が曲がっていったのか、左右のホイールがバランスを欠いていたのか、はたまた緩んだネジを放置していたからか。その原因については、当連載で中村さんが明らかにしてくれるはずだ。そして今後、個人メディアの立ち上げを考えている同業者に対して、私たちの失敗がいささかの教訓となったなら、6年に及ぶ忍耐と今日まで秘めてきた憤懣も少しは報われることだろう。(宇都宮徹壱)

■サッカーは関係ない連載を依頼されて

 2017年の暮れに、宇都宮徹壱さんから「とある連載をして欲しい」との連絡を頂いた。しかし、今回ばかりは流石に断ることにした。この年は、あまりサッカーの試合を観戦できなかったので専門誌に書くのは少し難しいかと感じていたのだ。どうして観戦できなかったのかというと、WMの記事にして頂いている。

 年内で退職することになってはいたが、このタイミングでサッカーの専門記事は書けない。そう伝えると……

「大丈夫ですよ。サッカーは関係ない企画ですから」

 頭の中に「?」が浮かんだが、とりあえずお話を聞かせて頂くことにした。

「実は、徹マガがどうして終わったのかについて記事にして欲しい」

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