「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【インタビュー】栃木SC 新里裕之テクニカルディレクターインタビュー前編 ~クラブ作りとは何か~「このクラブを愛するサポーターに絶対に損をさせてはいけない」

激動の今オフ、チーム強化の中心にいたのが新里裕之テクニカルディレクターだ。かつてFC琉球で監督を務め、その時期に元日本代表監督として名を馳せたフィリップ・トルシエからクラブ作りとはなにかのレクチャーを受けたという。

今季のチーム編成、選手を獲得するのに際して、新里氏がこれまでに構築してきた哲学はいったいどう作用したのか。まずはその辺りから話を聞いた。前編、後編の二回に分けてお届けする。

 

 

トルシエらの考えるクラブ作りのベース

 

――トルシエからクラブ作りについての影響を受けたと話されていました。どういうことなのか改めてお話してもらいたいのですが。

「はい。僕は沖縄にいるとき、トルシエから『沖縄はどうなんだ、このクラブは何のためにできたんだ』とあれこれ聞かれたんです。僕が、こういういきさつがあってクラブを作ったんです、などと答えると『じゃあこれから先、このクラブはどうしていきたいんだ、どう望んでいるんだ、サポーターや県民は何を望んでいるんだ、今の日本サッカー界はどうなんだ』などと矢継ぎ早に聞いてくるんですね。それで僕が答えると『お前がそういう考えならば、おそらくは多く人間がそう考えているのだろう』というんです。チーム作りよりも何よりも、まずそういうところから入っていくんだなと衝撃を受けたんです。

欧州には100年以上のフットボールの歴史があって、それが今もなぜ続いているのか。たとえば、街の人たちユニフォームは黄色だと認識する日々を送っている。そうなるためには、そもそもクラブに目指すものがなければならないんです。もちろん、普通にタイトルをとる、強いチームを作る、というのは当たり前です。トルシエはこう言うんです。『その時々で強いチームとは変わるものだよ。選手の質によって。お金の予算によって』『だけど、これは譲れないというものは何なのかというシンボルがないとダメだ』『FC琉球というクラブのエンブレムは世の中で一つしかないんだよ。世界に行っても同じマークはない』『だとしたら、このエンブレムを見ると身体が震える、気持ちが高ぶる、元気が出る、そういうものをクラブとして、フットボールとして、後世に残していかないといけないんだ』『おそらくそれにはゴールはないし、一生続くもの。だから、いつまでもクラブが続くためのことを日々やらないといけないんだ』。

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