「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

今季の練習風景にあるもの、来季へ繋げなくてはいけないもの。【Column】(20.12.11)

練習の雰囲気を牽引していたエスクデロ。

 

▼今季の練習のウォーミングアップは見所だった

9日の練習のウォームアップの風景は、今季のチームにある雰囲気を象徴していた。

ウォームアップ時、みんなが円をつくってその場に寝そべりながら、体幹やストレッチに時間をかけているときだ。その中でエスクデロ競飛王が甲高い声で「へい! (大島)康樹! いこうよいこうよ!」などと若手たちに声をかけていく。大島は何かを返したが、声が小さかったり、“返し”が不十分だったりしたら「もっといこうよ!」といった声がすかさず返ってくる。それを受けて、大島は苦笑いを浮かべながらも何とか乗り越えてみせた。そしてまたエスクデロが次の選手へと”振って”いく。他の選手たちはストレッチをしながらくすくすと笑みを浮かべている。

この点、チーム随一の陽キャラといっていい伊藤竜司のリアクションは群を抜いている。どんな振られ方をしたってへっちゃらだ。さながらベテランのお笑い芸人の域である。

今季がコロナ中断からリスタートしてからというもの、徐々にこのような風景が広がるようになった。そしてシーズンが中盤を過ぎた頃にはもはや当たり前の風景になっていった。チーム一丸、一体感、雰囲気の良さ。リーグ戦を戦う栃木SCの戦いぶりを形用する言葉が目立つようになったころと、ちょうど時期を同じにしていたように感じる。

この練習のウォームアップの雰囲気は、残念ながら練習見学ができない今季はサポーターが確認することはできないが、試合前のウォームアップにも同じような雰囲気があるので理解できる人は少なくないだろう。

エスクデロが言った。

「声を出すことを恥ずかしがる選手もたくさんいます。1番良くないのは、例えば、僕が明本と仲が良いから明本だけ鼓舞するとか、1人、2人の単位でやってしまうこと。そうではなくてチーム全体を巻き込むことが大事なんです。クラブハウスのロッカー内でも同じことですね。例えば、僕が誰かが嫌いだから話さないとか、絡まないとかではなく、全員に同じように接していく。それは、練習生だろうが、高校生だろうが関係ありません。全員に接することで、チームが一つになる。俺は声を出さないよ、そういうことをやらないよ、というスタンスの選手に対しても同じようにやるから、その選手も声を出さないといけなくなる(笑)。でも、声を出すことで『こういうのもあるんだ』と気付いてくれる。今季はそこを1番に意識しました。チームを巻き込めたからこそ、こういうチームの雰囲気ができたと思っています。

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