浦レポ by 浦和フットボール通信

決勝戦は勝ったかどうか 「勝ち方」でなく「勝ち」にフォーカスした90分【轡田哲朗ゲームレビュー/天皇杯決勝 仙台戦】


(Report by 轡田哲朗)

スタメンやセットプレーの情報を拡散しない800人

浦和レッズは9日の天皇杯決勝戦、ベガルタ仙台との一戦を1-0で勝利して、12大会ぶりの優勝を果たした。臨戦過程は決して順調と言えるものではなく、オズワルド・オリヴェイラ監督は6人のケガ人がいた状況と、ギリギリまで武藤雄樹のスタメンを迷ったことを明かしている。さらには、マウリシオは結局この試合に出場できなかった。

素晴らしいなと思ったことの1つは、この2人が決勝に出られるかどうかが決して楽観的でないことは、前日練習を見れば分かったはずだ。逆に、興梠慎三と青木拓矢は大丈夫そうだということも同じく。それを800人ほどが見ているのに、私が見た限りそういう情報がサポーターを通じてSNSで拡散されるようなことがなかったことだ。ついでに言えば、セットプレーのパターン練習で「長澤の動きに注目」だとか「ファーサイドに注目」みたいなことも広まらなかった。

本当に、前日練習に集まったのは「お客さんとしての800人」ではなく「一緒に戦う800人」なのだと感じられた。そして、ある種のサッカー的なリテラシーとでも言うのか、その情報がどれだけ大切なものかを理解している人ばかりだということ。その800人という数字や110枚の横断幕、フラッグに埋め尽くされた光景というのがピックアップされるけれども、本当に称賛されるべきは情報戦を託せる関係であることではなかろうか。

ということで、試合に戻ると浦和はマウリシオの位置に阿部勇樹が入ることになり、李忠成はベンチで不測の事態に備えることになった。それに加え、リードを守り切るための守備的な戦術カードとして使えるのは柴戸海のみだったので、持ち得る手札は多くない。森脇良太に関しては3バックと橋岡大樹のポジションに何かがあったら使わなければいけない選手なので、腰を軽くして簡単にピッチに入れることはできないからだ。

影のMVPは岩波拓也なのではなかろうか

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