松沢呉一のビバノン・ライフ

さらなる議論を望む-渋谷区「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」を検討する 4-(松沢呉一)-2,427文字-

 

渋谷区のパートナー条例は持ち越しか?

 

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渋谷のパートナー条例は「自民党が慎重なので、継続審議になるかもしれない」という話は聞いていたのですが、どうやらその公算が高そうです。

 

渋谷区の「同性婚」条例案、自民内から異論相次ぐ

2015年3月26日00時10分

自民党の「家族の絆を守る特命委員会」が25日、党本部で会合を開き、同性パートナーに証明書を発行し、公平かつ適切な対応を求める東京都渋谷区の条例案について議論した。参加議員から「党としてしっかり議論するため、区議会は継続案件とすべきだ」との声が上がり、桑原敏武区長や同党区議から説明を聴くため、同委への出席を求めることを決めた。

この日の会合では、議員から「『婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する』という憲法24条の両性は、男女としか読めない」などという理由で条例案の適法性に疑問の声が上がった。事実婚との関係から「同性間だけにパートナーシップを認めるのは異性愛者差別ではないか」との意見も出た。

古川俊治委員長によると、法務省の担当者からは「同性間のパートナーシップを認めることを禁じる法制になっていないので、(条例案は)法律上の問題があるとはいえない」との見解が示されたという。(二階堂友紀)

朝日新聞

 

同性婚に限らず、家族制度に抵触することには反発が強いのであります。そこに不安を感じる人たちの気持ちもわからんではない。家族という制度が綻びてきているがために不安になる。綻びてきているがゆえに、再考し、再定義すべきであると私は思うのですが、それを広く理解させるためには時間が必要です。

しかし、ここまで繰り返してきたように、この条例はそんな大層な内容ではありません。「結婚に相当する関係と認める証明書を発行する条例」という打ち出しが誤解を招いたのだと思います。

条文を見ればわかるように、「男女の婚姻関係と同様の関係がすでに成立している同性カップルに、その関係を証明し、既存の法律の範囲で不利益の解消を目指す条例」といったところであって、特別な権利を付与するわけではないのです。

すでに説明したように、一部、不公平感を生む余地がないわけではなく、ここは再考すべき点ですが、それにしたって民法を超えるようなものではありません。法務省の説明が正しい。

 

継続審議の上、より広い議論を

 

vivanon_sentence当初から、「同性婚の議論になると、通るものも通らない」と危惧していた通りの展開になってしまいました。打ち出し方のミスだと思います。

ひとたびこうなったら、反対派、慎重派の人たちにしっかり理解してもらうべきなので、継続審議でいいんじゃなかろうか。

ここまで書いて来たように、もう一度練り直した方がいい点があります。十分に内容を理解しIMG_5856ていないのは、自民党だけじゃなくて、賛成している人々も同様ですから、最初からやりましょう。

他の自治体でも追従する動きがあるだけに、渋谷区の条例は手本になるわけで、そうであるなら、もっと広く議論をすべきであり、「本当にパートナー証明書がなければ解決できないことなのか」「パートナー証明書を求めるカップルがそうも存在するのか」から検討しなおした方がいいと思います。

これは私だけの意見ではありません。当事者にも私と同様の意見をもっている人たちがいますので、ちゃんと意見に耳を傾けるべきです。

以下、そういった意見をご紹介します。

※写真はとくに意味はないです。先日、上野公園で撮ってきました。

 

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