松沢呉一のビバノン・ライフ

性器切断事件の注目すべき点-阿部定を超えるレアな事件(松沢呉一) -4,360文字-

 

阿部定は一人ではない

 

vivanon_sentence男性器切断事件ですけどね、私の得意分野ではあっても、事件直後に書くのは生々しいので、ここまで黙ってました。でも、そろそろいいかなと。

まず事件の概要。

 

 

局部切断で男を現行犯逮捕 当時、妻と被害者の3人で話し合い

08/13 19:43

東京・港区の弁護士事務所で13日朝、弁護士の男性が殴られ、局部を切り取られる事件があり、元プロボクサーの男が現行犯逮捕された。(略)

弁護士に対する傷害の現行犯で逮捕されたのは、元プロボクサーの小番一騎容疑者(24)。

小番容疑者は13日午前7時半すぎ、東京・港区の弁護士事務所で、弁護士の42歳の男性の顔を数回殴ったうえ、枝切ばさみで局部を切り取り、トイレに流した疑いが持たれている。

小番容疑者は数年前にプロボクサーをやめ、慶応大学の法科大学院で法律家を目指していたという。
(略)
小番容疑者は13日朝、この事務所に勤める妻と2人で事務所を訪れ、3人で話し合いをしている最中に犯行に及んだということで、警視庁は、男女間のトラブルとみて、くわしく調べている。

 

 

男性器切断事件と言えば阿部定が知られ、この名前を出している報道もあります。

あの事件が突出しているだけで、忘れられた男性器の切断事件は多数あります。詳しくは桑原稲敏著『19人の阿部定』(現代書林・昭和56年)でも読んでいただくとよいかと思いますが、ここに取り上げられていない事件も多数あって、10年ほど前に海外でもそういう事件があって話題になりました。

その多くは女が嫉妬に狂って、男を自分だけのものにしたいと熱望することによるものです。吉藏も妻がいましたので、始まりとしてはその衝動があったのだろうと思います。

IMG_5178_2同類の多数の事件の中でどうして阿部定のみが脚光を浴びて、今なお語り継がれているのかについては過去に原稿を書いているので、ここでは割愛しますが、つい先日聞いたところによると、定と吉藏が出会った新井薬師の花街跡に残されていた古い建物群がごっそり取り壊されたらしい(右の写真)。

戦前のものではないので、定と吉藏が見たものが残っていたのではないのですけど、花街自体は戦後も引き継がれていて、30年ほど前まで芸者さんもいました。

その面影を残す建物が残る一角があったのです。今では新井薬師に花街があったことさえ知らない人も多いため、花街の名残があることに気づいていなかった人たちが多いのですけど、これで花街があったことの目印は柳並木だけになりました。

 

 

女性器切除事件もあるにはある

 

vivanon_sentence男性器の切断に対して、女性器の切除事件は非常に少ない。当たり前と言えば当たり前で、穴ですからその周辺をえぐる必要があります。簡単に切り取るとすれば陰唇やクリトリスということになりましょうが、これだと女性器の一部にすぎません。

全部を切り取った例がないわけではなくて、有名どころでは増淵倉吉事件があります。昭和七年に名古屋で起きた猟奇事件で、またの名を陰獣倉吉事件。私、この事件にムチャ詳しいです。

 

 

※以下、大変刺激の強い写真が出てきますので、見たくない人は決して見ないように。

 

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